日本の雅情と浪曼主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 07:45 UTC 版)
蓮田は先鋭な古今主義者で、今日に生きる自分の切実な問題意識に応えるものとして、〈自然に芸術的秩序を命課する絶対世界〉である古今和歌集を強く押し出した。 文学の噴出点は、凡ゆる意味の現実自然の素材天質から抽象された文学的世界である。抽象といつても、正しく言へば、自然から抽象されたやうに見えるが、実は自然に芸術的秩序を命課する絶対世界の開眼である。これに触れることによつてのみ自然も文学の素材となり、素質も文学的元質を発輝する。(中略)彼らのうちたてた風雅の秩序は遂に此の現身の世界を蔽つて、文化世界へ変革をなしとげた。 — 蓮田善明「詩と批評――古今和歌集について」 死後に刊行された蓮田の小説『有心(今ものがたり)』、または日記『陣中日記』では戦場の体験が描かれている。その内容から戦場は蓮田にとって、死を直視した「末期の眼」を持って生と芸術(文学)の充実を確認させ、昇華させる貴重な舞台であることが見て取れる。蓮田は軍務のあいまを縫って、時間を惜しむようにいつも机に向かい執筆をしていたという。 千坂恭二は、蓮田の自決は突発的な偶然事であり、むしろ第一次応召と第二次応召の間に著された『鴨長明論』の隠遁の思想に、蓮田のありえたかもしれない「戦後」を先行的に見ることが出来ると解釈している。
※この「日本の雅情と浪曼主義」の解説は、「蓮田善明」の解説の一部です。
「日本の雅情と浪曼主義」を含む「蓮田善明」の記事については、「蓮田善明」の概要を参照ください。
- 日本の雅情と浪曼主義のページへのリンク