日常生活批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/30 08:34 UTC 版)
「アンリ・ルフェーヴル」の記事における「日常生活批判」の解説
彼流に仕上げられた「弁証法的唯物論」のなかでは、個人と具体的なプラクシスが中心的な場所を占めている。ひとつの代替的な社会人類学を提案しながら、アンリ・ルフェーヴルは、日常性(quotidienneté)が、資本主義のもとでそれがまとっている、支配的諸階級によって集団生活に押し付けられた特徴・性格を再生産することにのみ役立つような役割から、解放されることの必要性を支持したのである。習慣(habitude)は、非歴史的ゆえに真正でないその時間性とともに、支配関係を再生産し永続させる以外のなにものも為さないとされる。日常性は一種の地下鉱床のようなもので、そのなかに諸々の協約や権力の諸々の嘘が堆積している。夢想(fantaisie)と創意工夫の能力(inventivité)が固有の自律的表現にむかう経路を見出すことを妨害する障壁がそこに存在する。 このことから、ルフェーヴルによって芸術に付与された特権があり、これはその自律性において以上に、毎日の生活様式の協約性の根拠なき特徴を証明することが可能な美的経験の手段として理解されている。近代芸術は日常性の廃絶の諸条件を提起するのである。これらの理論は、ルフェーヴルが若い頃所属していた、シュルレアリスム運動の経験と洞察に関連している。『日常生活批判』三部作(1947年、1961年、1981年)は非常に深化された仕方でこの思考を提示している。 日常生活批判はアンテルナシオナル・シテュアシオニストのインスピレーションの息吹のひとつであり、また支配関係の再生産についてはピエール・ブルデューの、芸術による解放についてはベルナール・スティグレールのうちにも同様に見出される。 (日常生活批判に関連する著作) Critique de la vie quotidienne, 1947, L'Arche 〔邦訳『日常生活批判 序説』〕 Critique de la vie quotidienne II, Fondements d'une sociologie de la quotidienneté, 1961, L'Arche 〔邦訳『日常生活批判1』『日常生活批判2』〕 Critique de la vie quotidienne, III. De la modernité au modernisme (Pour une métaphilosophie du quotidien), 1981, L'Arche 〔邦訳なし〕 La Vie quotidienne dans le monde moderne, 1968, Gallimard 〔邦訳『現代世界における日常生活』〕 Eléments de rythmanalyse: Introduction à la connaissance des rythmes, 1992, avec Catherine Regulier-Lefebvre, préface de René Lourau, Syllepse 〔邦訳なし〕
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