旅行の制限
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 03:48 UTC 版)
国境規制もしくは国内旅行の制限は、99%のカバー率で実施しない限り、感染症の拡大を2週間から3週間以上遅らせられない見込みである。空港でのスクリーニング検査は、カナダおよびアメリカ で発生した2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)のアウトブレイク(突発的発生)においては、ウイルスの伝播の防止に効果がないことが分かった。オーストリアとオスマン帝国との間の国境において、腺ペストの感染者がオーストリア側に流入することを防止するため1770年から1870年まで厳格な国境の管理が実施されたが、これは効果があったと言われている。国境管理策が設定されてからオーストリア領内では一度も大規模な疫病の流行が発生しなかったためであるが、一方でオスマン帝国側では19世紀後半まで何度も伝染病の蔓延に悩まされ続けた。 2020年3月に公表されたノースイースタン大学の研究では、「中国との間の旅行の制限は、地域社会や個人のレベルで感染減少の努力が行われ、それらの努力と組み合わさる場合にのみ、COVID-19の拡大の速度を遅らせられる。[...]旅行の制限は、社会距離の拡大と組み合わせて実施されなければ十分な施策ではない。この研究によって、武漢における旅行の禁止措置は、国外に対する感染症の拡大を80%程度減少させたものの、 中国本土の他地域への感染症の拡大を3日から5日程度遅らせたに過ぎなかったことが明らかになった。旅行の制限措置が有効でなかった主な理由は、多くのCOVID-19感染者が感染の初期段階において症状を示さないためである。
※この「旅行の制限」の解説は、「社会距離拡大戦略」の解説の一部です。
「旅行の制限」を含む「社会距離拡大戦略」の記事については、「社会距離拡大戦略」の概要を参照ください。
- 旅行の制限のページへのリンク