新トマス主義
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新トマス主義(しんとますしゅぎ、英: Neo-Thomism)は、19世紀後半にローマ教皇レオ13世の回勅『天使的博士・聖トマスアクィナスの精神に基づくキリスト教的哲学の復興』(エテルニ・パトリス)をきっかけに起きた、トマス・アクィナスの神学・哲学を現代に復活させる思想ないし運動をいう。広い意味でのトマス主義であるが、スコトゥス主義に対する狭義のトマス主義と区別する意味で新トマス主義ないし新スコラ主義と呼ばれることが多い。ネオ・トミズムとも。
カトリック信仰を前提とし、哲学を神学の下位におき、法と民主主義を遵守して生活することを旨とする。その影響は広汎で、学問の分野を問わず、世界各国にも及んでいる。代表的な論者にフランスのエティエンヌ・ジルソン、ジャック・マリタンがいる。人間の本性に即して理性的に社会制度の長所・問題点を検討するという自然法に基づく方法論は、シュライバーの『トマス以降のスコラ経済学』、クールマンの『トマスの法学における権利に関する法概念』、オットー・シリンクの『トマスの国家・社会教説』、リンヒャルトの『聖トマスの社会諸原理』などに結実している。
日本では、遠藤周作、田中耕太郎、星野英一らが影響を受けている。
参考文献
関連項目
- トマス主義
- メルシエ枢機卿
新トマス主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/13 00:17 UTC 版)
トマスの思想は、近代的認識論の成立により、急速に衰え始めたが、19世紀になると、新トマス主義の存在論として復活した。新トマス主義には、「人格神たる神が存在するという神学的な立場を前提に、トマスの哲学を研究しようとするもの」、そして「そのような立場については判断を留保し、現代的な哲学・科学の成果を取り入れ、修正すべき点は修正した上でトマス哲学を研究しようとするもの」の二つに大きく分かれる。特に論争となっている点は、カントによる批判哲学、認識論の研究成果については、エティエンヌ・ジルソンのように、存在論に対する認識論的優位を認めてしまうと、結局は観念論に行き着いてしまうことからする消極的な立場と、むしろトマスの哲学には認識論的に示唆に富む記述が多いとして、フランス反省哲学のように、これを現代的に修正していこうとする立場がある。もっとも、前者の立場といえども哲学はあくまでも理性に基づくものであり、「神と魂の存在」という共通の信念をもっているとしても、神学とは区別され、その限りで「キリスト教的哲学」というものも存在するというのである。
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