文字解釈例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 16:43 UTC 版)
本書の文字解釈は経典の伝統的訓詁から出発し、青銅器銘文の出典、典故を得て、経典の訓詁を新しく読み直している。しかし、訓詁における思惟の形式自体は崩されることなく説解が行われている。以下、本書の文字解釈の例(一部分を抜粋)を記す。 口(コウ・ク・くち)、象形、口の形。『説文』二上に「人の言食する所以なり」という。卜文・金文にみえる字形のうち、口耳の口とみるべきものはほとんどなく、おおむね祝禱(しゅくとう)・盟誓を収める器の形である(さい)の形に作る。従来の説文学において、口耳の口に従うと解するために、字形の解釈を誤るものは極めて多く、(後略) 工(コウ・ク・たくみ)、象形、工具の形。『説文』五上に「巧飾なり」と訓し、人が規榘(きく)をもつ形で、巫と同意であるとするが、巫は呪具としての工をもつ形であるから、巫とは関係がない。(後略) 左(サ・ひだり・たすける)、会意、ナ(さ)と工に従う。ナ(さ)は左の初文で、左手の形。『説文』五上に「手相左助するなり」という。左の手に工をもつ形が左。(後略) 尋(ジン・たずねる・つぐ・ひろ)、会意、左と右に従う。左と右の両字を上下に組み合わせた形。左右は神を祀るときの動作を示す字で、(中略)左右の手でたどりながら、神の所在を尋ねることを尋という。(後略) 右(ユウ(イウ)・ウ・みぎ・たすける)、会意、又と口とに従う。又は右手の形。口は(さい)で、祝禱を収める器の形。(中略)『段注』に「又なる者は手なり。手もて足らず、口を以て之を助くるなり」と解する。左右の字の原義が、祝禱・呪儀に関するものであることは、従来全く理解されていないことであった。(後略)
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