整域と体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/11 14:00 UTC 版)
詳細は「整域」および「体」を参照 環は非常に重要な数学的対象であるにもかかわらず、その理論の展開には様々な制約がある。例えば、環 R の元 a, b に対して、a が零元でなく ab = 0 が成り立つとしても、b は必ずしも零元でない。特に、ab = ac で a が零元でないということから、b = c を帰結することができない。このような事実の具体的な例としては、環 R 上の行列環を考えて、a を零行列ではないような非正則行列とすればよい。しかし、環に対して更なる条件を課すことで、今の場合の問題は取り除くことができる。すなわち、考える環を整域(零因子を持たない非自明な可換環)に制限するのである。しかしこれでもなお、零元でない任意の元で割り算ができるかどうかは保証されないといったような問題は生じる。例えば整数環 Z は整域を成すが、整数 a を整数 b で割るというのは整数の範囲内では必ずしもできない(整数 2 で整数 3 は割り切れず環 Z からはみ出してしまう)。この問題を解決するには、零元以外の任意の元が逆元を持つ環を考える必要がある。すなわち、体とは、環であって、その零元を除く元の全体が乗法に関してアーベル群となるようなものである。特に体は割り算が自由にできることから整域となる(つまり零因子を持たない)。すなわち、体 F の元 a, b に対して、商 a/b は ab−1 によって矛盾無く定まる。 環 (R, +, · ) が整域であるとは (R, +, · ) が可換環で、零因子を持たないことを言う。さらに環 (R, +, · ) が体 であるとは、零元でない元の全体が乗法に関してアーベル群を成すことを言う。 注意: 環の零元が乗法逆元を持つことをも仮定するならば、その環はかならず自明な環となる。 整数全体の成す集合 Z は通常の加法と乗法に関して整域を成す。 任意の体は整域であり、任意の整域は可換環である。実は有限整域は必ず体を成す。
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