教育上の意義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 02:33 UTC 版)
淀井はあるとき同僚のリクエストで「足算の奇数編がほしい」と言われたため「星算(ほしざん)」というゲームを作った。これは北極星=1、夏の大三角=3、カシオペヤ座=5、北斗七星=7……というカードゲームだった。星算も合計10を目指すゲームである。しかし、星算を試してみると、「おもしろくない、イライラする、むづかしい」という結果になった。淀井は2011年に仮説実験授業研究会の夏の研究大会参加者との話でなぜ足算がおもしろいのかについて「偶数だから心地よい」ということに気がついた。足算では「2、4、6、8、10……」というリズムがあり、足し算した結果も必ず偶数になる。奇数の場合は足し算すると偶数になり、心地よいリズムがないと考えた。 淀井は「足算では10の補数とはいっても偶数に限られる、これは欠点と言えるが、偶数だけにすることによって、足し算のおもしろさや心地よさがあじわえ、次のステップになる」としている。 教育学者・科学史家の板倉聖宣は、「わたしたちはあの手この手で知識の定着をはかるようにして「工夫」しますが、そのとき意識するにしろしないにしろ「競争原理」を入れてしまうことがあります。それはゲームの形を取ることもあります。ゲームとはそもそも競争そのものですから、そのことで盛り上がるかもしれません。しかしうまいことを考えつく子は、たいてい途中で固定化します。そうしたら、もう絶対に嫌になる子が現れます」と述べている。 淀井はこれを受けて「カードゲームの中には普通のカルタのように競争によるおもしろさをえられるものもある。やればやるほどカードが覚えられ、コツをつかみ、どんどん早く取れるようになっていく」が、一方で「だからと言って、それをそのまま授業に持ち込んでしまうと、色々な問題が起きてきそうです。その一つが「能力差」という問題です」。「教室というところは普通に教科書の授業とかテストなんかをしていれば、「競争」や「勝ち負け」などわざわざ教えなくても、子どもたちはそれらの現実について十分感じ取ってしまいます。だからこそ、せめてわたしが開発したカードゲームでは、できるだけ競争原理を超えた世界でたのしんでほしい」と述べている。 淀井はカードゲームをする理由として「楽しい」からであるが、その「楽しい」は自由に遊ばせる楽しさではなく、学習に役立ちつつ「楽しい」からであるとしている。
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