接束上の自然なベクトル場
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/17 05:35 UTC 版)
各接束 TM 上、それを多様体と考えて、各点における接空間上の対角写像として自然なベクトル場 (canonical vector field) V: TM → TTM を定義できる。これは可能であるのはベクトル空間 W の接空間は自然に積 T W ≅ W × W {\displaystyle TW\cong W\times W} であることによる。ベクトル空間自身は平坦でありしたがってこの積の構造のもとで w ↦ ( w , w ) {\displaystyle w\mapsto (w,w)} によって与えられる自然な対角写像 W → T W {\displaystyle W\to TW} をもつ。この積の構造を各点で接空間に適用し大域化することで自然なベクトル場が生じる。インフォーマルには、多様体 M が曲がっていたとしても、点 m における各接空間 T m M ≈ R n {\displaystyle T_{m}M\approx \mathbf {R} ^{n}} は平坦であるので、接束多様体 TM は局所的に曲がった M と平坦な R n {\displaystyle \mathbf {R} ^{n}} の積である。したがって接束の接束は局所的に( ≈ {\displaystyle \approx } を"座標の選択"に、 ≅ {\displaystyle \cong } を"自然な同一視"に使って): T ( T M ) ≈ T ( M × R n ) ≅ T M × T ( R n ) ≅ T M × ( R n × R n ) {\displaystyle T(TM)\approx T(M\times \mathbf {R} ^{n})\cong TM\times T(\mathbf {R} ^{n})\cong TM\times (\mathbf {R} ^{n}\times \mathbf {R} ^{n})} そして写像 T T M → T M {\displaystyle TTM\to TM} は第一座標の上への射影である: ( T M → M ) × ( R n × R n → R n ) . {\displaystyle (TM\to M)\times (\mathbf {R} ^{n}\times \mathbf {R} ^{n}\to \mathbf {R} ^{n}).} 最初の写像を零切断を通じて、および二番目の写像を対角写像によって分解することで自然なベクトル場が生まれる。 (x, v) が TM の局所座標であれば、ベクトル場は表現 V = ∑ i v i ∂ ∂ v i | ( x , v ) {\displaystyle V=\sum _{i}\left.v^{i}{\frac {\partial }{\partial v^{i}}}\right|_{(x,v)}} をもつ。より具体的に書けば、 ( x , v ) ↦ ( x , v , 0 , v ) {\displaystyle (x,v)\mapsto (x,v,0,v)} —前二つの座標が変わらないのは、ベクトル場が接束の切断であり、この二つの座標が表す点が底空間の点であることによる:後ろ二つの座標は切断そのものである。ベクトル場のこの表現は v のみにより x によらないことに注意しよう。接線の向きだけが自然に同一視できるからである。 別な定義の仕方として、スカラー乗法を与える写像を考える: { R × T M → T M ( t , v ) ⟼ t v {\displaystyle {\begin{cases}\mathbf {R} \times TM\to TM\\(t,v)\longmapsto tv\end{cases}}} R 成分の変数関する時刻 t = 1 におけるこの関数の微分は関数 V: TM → TTM であり、これは自然なベクトル場の別の記述である。 TM 上のそのようなベクトル場の存在は余接束上の自然 1-形式(英語版) に類似である。ときどき V はまたリュービルベクトル場 (Liouville vector field) あるいは 動径ベクトル場 (radial vector field) と呼ばれる。V を使って接束を特徴づけることができる。本質的に、V は 4 つの公理で特徴づけることができ、多様体がこれらの公理を満たすベクトル場をもてば、多様体は接束でありベクトル場はその上の自然なベクトル場である。例えば De León et al. を見よ。
※この「接束上の自然なベクトル場」の解説は、「接束」の解説の一部です。
「接束上の自然なベクトル場」を含む「接束」の記事については、「接束」の概要を参照ください。
- 接束上の自然なベクトル場のページへのリンク