感情的な涙の区別
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/05 07:52 UTC 版)
ポジティブなものとネガティブなものという相異なる2種類の泣き方を区別する試みは数多く行われてきた。経験される感情の検証と両タイプの対称性を把握するために、3つの次元に観点が分けられている。 空間的観点からは、悲しみの涙は「そこ」に働きかけるものとして説明される。例えば家庭や死んだばかりの人のもとにいる場合である。対して楽しいときの泣き方は、「ここ」にいることを認知する行為である。この場合は例えば知人の結婚式のように、その人の立ち位置についての強い自覚に特徴づけられる。 時間的観点は泣くことをやや異なる見方で説明する。この観点では、悲嘆にくれる泣き方は、後悔をもって過去を見る視点か、恐怖を伴った未来への視点に起因するものである。ここでは泣くことを、誰か・何かを失うことや、もっと長くその人・ものと時間を過ごすべきだったという後悔の結果として、あるいは来るべき出来事に対する緊張の結果として描き出している。喜びの結果としての涙は、あたかも永遠であるかのような瞬間に対する反応であり、人は幸福な、不滅の現在の中に固定されている。 3つ目の次元は公私の視点と呼ばれるものである。この観点は2種類の泣き方を、私的に知られている自己自身の機微、あるいはその人の公的なアイデンティティを示唆する方法として描き出す。例えば喪失による涙は、内なる苦しみに対処するための助けを求める外界へのメッセージである。あるいはアルトゥル・ショーペンハウアーが提起したように、悲しんで泣くことは自己憐憫や自愛の一つの手段であり、自分自身を慰める方法である。喜びに泣くことは、これと対照的に、美・栄誉・善の見返りである。
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