意味論的な冗語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 20:16 UTC 版)
意味論的な冗語は、文法的なものよりもスタイルと使い方が問題とされる。言語学者たちは普通、統語論の「冗語」との混同を避けるため、これを「重言」と呼んでいて、それにはいくつかの形式がある。 (1) 重複:ある語の意味論的な構成要素が他の語に包含されている。 Receive a free gift with every purchase.(購入ごとにただのおまけを受け取ってください) - 「おまけ」には「ただ」という意味が包含される。 The plumber fixed our hot water heater.(その配管工は私たちの温水加熱器を修理した) - 「加熱器」には「温かい」という意味が含有されている。ジョージ・カーリンはこの特殊な冗語を痛烈に攻撃した。 (2) くどさ:追加された語が、その意味に論理的な何か、関係ある何かを追加するわけではないもの。 I'm going down south.(私は南に下って進んでいる) - 「南」は習慣として地図では「下」になるが、現実に「下って」いるわけではない。 ところで、「tuna fish(マグロ魚)」という冗語表現はいろいろなとらえ方ができる。 単純に「tuna(マグロ)」の同義語。 余分な表現。 「tuna」との区別。「tuna」には「ツナサボテン」という意味もある。 たとえば「tuna」は短い語でその後に気音が続くと聞き間違えられるかも知れないので、はっきりとわからせるため。たとえば、アメリカ合衆国南部では「pen(ペン)」の代わりに「ink pen(インクペン)」と言うが、これは「pen」と「pin(ピン)」の発音が似ているせいである。 一方、ある見方によっては冗語だが、別の見方からすれば冗語でない場合もある。 Put that glass over there on the table.(あそこのテーブルの上にそのグラスを置いてください) これは部屋の配置による。たとえば「部屋のあっちのテーブルにそのグラスを置いてください、あなたの前の右のテーブルではないです」という意味で言う場合は冗語ではない。しかし、部屋に1つしかテーブルがないのならこれは冗語である。また、「テーブルの上のあそこにそのグラスを置いてください」という意味なら、それも冗語ではない。 英語において、よく知られている形態論の冗語的使用は「Irregardless(不注意な)」という語で、これは「非語(non-word)」であると広く批判されている。スタンダードに使われている「regardless(注意しない)」は元から否定的な語であるのに、さらにそれに否定的な接頭辞「ir-」を加えたのはくどいどころではなく、論理的には「with regard to/for(注意を払う)」に意味の逆転した撞着語法になっていて、おそらく話者が伝えたかった意味ではない。
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