形態論による分類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 05:54 UTC 版)
意味的な基準が適用できない場合に、その名詞の屈折のしかたによって性を付与する言語がある。 例えばロシア語では、男性・女性・中性の3つの性があるが、男性と女性の付与には意味的な基準がある。男性や高等動物の雄を指す名詞は男性名詞に、女性や高等動物の雌を意味する名詞は女性名詞に分類される。 男性や雄→男性名詞:отец 「父」、дядя「おじ」、лев 「雄ライオン」 女性や雌→女性名詞:мать 「母」、тётя「おば」、львица「雌ライオン」 しかし、性別を持っていないものを表す名詞は、男性のこともあれば女性や中性のこともある。 実物には性別がないものを指すロシア語の名詞の性男性女性中性журнал(雑誌) дом(家) чай(紅茶) автомобиль(車) вечер(夕方) флаг(旗) закон(法律) газета(新聞) школа(学校) вода(水) машина(車) ночь(夜) эмблема(紋章) гласность(開放) письмо(手紙) здание(建物) вино(ワイン) такси(タクシー) утро(朝) знамя(旗じるし) доверие(信頼) このように、性別を持たないものを指すロシア語の名詞は意味的には似ていても違う性が付与される。性別を持たないものを意味する名詞を分類する基準は曲用のタイプという形態論的なものである。 ロシア語の単数名詞の曲用IIIIIIIV主格 закон школ-а кость вин-o 対格 закон школ-у кость вин-o 生格 закон-а школ-y кост-и вин-а 与格 закон-у школ-е кост-и вин-у 造格 закон-ом школ-ой кость-ю вин-ом 前置格 закон-е школ-е кост-и вин-е закон「法律」 школa「学校」 кость「骨」 вино「ワイン」 ロシア語には大きく分けて4つの曲用のタイプがあり、タイプ I は男性名詞、タイプ II とタイプ III は女性名詞、それ以外は中性名詞である。ただし、曲用のタイプよりも意味的な基準が優先するため、タイプ II にも男性名詞が存在する。このような、曲用のタイプと性との強い相関はインド・ヨーロッパ語族にはめずらしくない。
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