対称多項式とは? わかりやすく解説

対称式

(対称多項式 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/06 00:04 UTC 版)

対称式(たいしょうしき、symmetric polynomial)あるいは対称多項式(たいしょうたこうしき)とは、変数を入れ替えても変わらない多項式のことである。

概要

2 変数の多項式

f(x, y) = x2 + x y + y2

において、xy を入れ替えた式

f(y, x) = y2 + y x + x2 = x2 + x y + y2

は、元の f(x, y) とは全く変わらない多項式である。このように、変数を入れ替えても変わらない多項式のことを対称式という。

似たようなものに交代式がある。交代式は

g(x, y) = x2y2

のように、変数を入れ替えると、もとの式と符号が変わる

g(y, x) = y2x2 = − g(x, y)

という性質を持つ式である。符号が変わるだけなので、偶数個の交代式の積や、交代式を 2 乗した式などは対称式となる。例えば

g(x, y)2 = (x2y2)2

は対称式である。

任意の対称式は、基本対称式

s1 = x + y
s2 = x y

の多項式で書ける。例えば

f(x, y) = x2 + x y + y2 = (x+y)2x y = s12s2

である。

こういった対称式の概念は、 2 変数に留まらず、3 変数以上の多項式にも拡張される。例えば

f(x, y, z) = x3 + y3 + z3
f(x, y, z, w) = 2 x + 2 y + 2 z + 2 w + 3 y2 z2 w2 + 3 z2 w2 x2 + 3 w2 x2 y2 + 3 x2 y2 z2

は、それぞれ、3 変数と 4 変数の対称式であり、どの 2 つの変数を入れ替えても、元の多項式と変わらない式である。

アルベール・ジラールフランス語版英語版は、1629年に「代数学の新しい発明」(Invention Nouvelle en l'Algèbre) おいて、n 次の代数方程式根と係数の関係を発見した。代数方程式の係数は n 個の根の基本対称式と呼ばれる対称式により書かれるというこの関係は、一般の次数の代数方程式の構造を調べるための重要な足掛かりの一つとなった。さらに、ジラールは、これらの関係を用いて虚数の有用性を説いた。

18世紀の後半になると、任意の対称式は基本対称式によって書くことができる事が、ウェアリングヴァンデルモンドフランス語版英語版らによって示され、ラグランジュによる、代数方程式の根の置換の研究へとつながっていった。

定義

対称式

Λn = {1, 2, 3, …, n} とし、Sn は Λn作用する n 次の対称群とする。

n 変数の多項式 f(x1, x2, …, xn) が、任意の σ ∈ Sn に対して

f(x1, x2, …, xn)σ = f(xσ(1), xσ(2), …, xσ(n)) = f(x1, x2, …, xn)

を満たすとき、f(x1, x2, …, xn) を、対称多項式あるいは対称式という。

要は f は変数をどのように入れ替えても不変な多項式である。

同様に有理式


対称多項式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/12 08:25 UTC 版)

多変数多項式」の記事における「対称多項式」の解説

詳細は「対称式」を参照 n 変数の対称多項式とは、それが任意の二つ不定元置換のもとで不変であるときに言う。例えば三変数XY + YZ + ZX対称であり、他方 X2Y + Y2Z + Z2X はそうでない対称性により任意の対称多項式は斉次だが、任意の斉次多項式場合異なり多項式和と積のもとでこの対称性保たれるから、対称多項式の全体多項式環部分環となる。 基本対称多項式 1 ≤ i ≤ n とするとき、i-次の基本対称多項式 Si は i-次単項式 Xk1⋯Xki を 1≤ k1 < ⋯ < ki ≤ n なる範囲に亙って取った和を言う。例えば、最初は各不定元を一つずつとった和 S1 := X1 + ⋯ + Xn であり、また、すべての不定元を一つずつ掛けた Sn := X1⋯Xn が最後の基本対称多項式である。 対称多項式の基本定理(フランス語版) 任意の対称多項式は、基本対称多項式の多項式に一意的に書くことができる。 ニュートンの公式(英語版) d > 0 を整数として、Pd := X d1 + ⋯ + X dn は対称多項式であり、d-次のニュートン多項式呼ばれるPd基本対称多項式函数として表す式は(上の定理示唆するように)ニュートンの公式から間接的に導出できる: { P dS 1 P d − 1 + S 2 P d − 2 + ⋯ + ( − 1 ) n − 1 S n − 1 P d − n + 1 + ( − 1 ) n S n P d − n = 0 ( d ≥ n ) P dS 1 P d − 1 + S 2 P d − 2 + ⋯ + ( − 1 ) d − 1 S d − 1 P 1 + ( − 1 ) d d S d = 0 ( d < n ) . {\displaystyle {\begin{cases}P_{d}-S_{1}P_{d-1}+S_{2}P_{d-2}+\dotsb +(-1)^{n-1}S_{n-1}P_{d-n+1}+(-1)^{n}S_{n}P_{d-n}=0&(d\geq n)\\[5pt]P_{d}-S_{1}P_{d-1}+S_{2}P_{d-2}+\dotsb +(-1)^{d-1}S_{d-1}P_{1}+(-1)^{d}dS_{d}=0&(d 0 で体に係数を持つ多項式とする。t1, …, tn を P(X) の分解体における P(X) の根(重複があってもよい)とすればSi(t1, …, tn) = (–1)i⋅ai (i = 1, …, n) が成り立つ。

※この「対称多項式」の解説は、「多変数多項式」の解説の一部です。
「対称多項式」を含む「多変数多項式」の記事については、「多変数多項式」の概要を参照ください。

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