委託条件、工賃等
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/17 07:35 UTC 版)
6月をこえて継続的に同一の家内労働者に委託をしている委託者は、当該家内労働者に引き続いて継続的に委託をすることを打ち切ろうとするときは、遅滞なく、その旨を当該家内労働者に予告するように努めなければならない(委託の打切りの予告、第5条)。 家内労働者が長い期間にわたつて、同一の委託者から委託を受けているような場合には、これが突然打ち切られると、その家内労働者は予定された生活設計の変更を余儀なくされることになるので、そのような場合には、委託者はその旨を遅滞なく家内労働者に予告するように努めなければならないものとしたものであること。なお、本条は、家内労働が雇用労働と異なり一般に委託量の変動が激しいという事情を考慮して、努力規定にとどめたものであること(昭和45年10月1日発基第115号)。 工賃は、家内労働者に、通貨でその全額を支払わなければならないが(第6条1項)、委託者が家内労働者の同意を得た場合には、次の方法によることができる(施行規則第3条)。 郵政民営化法第94条に規定する郵便貯金銀行がその行う為替取引に関し負担する債務に係る権利を表章する証書の交付 銀行その他の金融機関に対する預金又は貯金への振込み。 工賃は、厚生労働省令で定める場合を除き、委託者が家内労働者の製造又は加工等に係る物品についての検査(以下「検査」という。)をするかどうかを問わず、委託者が家内労働者から当該物品を受領した日から起算して1月以内に支払わなければならない。ただし、毎月一定期日を工賃締切日として定める場合は、この限りでない。この場合においては、委託者が検査をするかどうかを問わず、当該工賃締切日までに受領した当該物品に係る工賃を、その日から1月以内に支払わなければならない(第6条2項)。 家内労働者は、その工賃により生活を維持し、または生計を補助するため労働しているものであるから、工賃は原則として、通貨でその全額を、委託者が家内労働者から物品を受領した日から一月以内に、または毎月の工賃締切日から一月以内に支払わなければならないこととしたものであること。ただし委託者の営業所と家内労働者の作業場とが遠く離れている場合などには家内労働者にとっても便利な場合があることを考慮し、家内労働者の同意を得た場合には、郵便為替の交付、銀行等に対する預貯金への振込または郵便振替口座への払込みもしくは振替によることができるものとしたものであること(昭和45年10月1日発基第115号)。 第6条1項は、工賃の通貨による全額払いを規定したもので、工賃からの控除を禁止する趣旨であり、原材料等の代金その他委託者が家内労働者に対して持つ債権と工賃との相殺は認めないものであること。検査をするかどうかを問わず1月以内に工賃を支払わなければならないこととしたのは、検査が完了していないことを理由として、工賃支払いを延引することを防止する趣旨であり、1月という期間の経過後に検査をして不良品が発見された場合にも工賃の支払義務を免れるものではないこと。ただし1月以内に検査をして不良品が発見された場合には、それに対応する工賃を支払わなくても本条の適用はないものであること。工賃の支払期日は、法律上あらかじめ特定すべきことを明確には規定していないが、本法の目的からみて、製品の受領後一定期日払いまたは毎月一定期日払いの定めをすることが望ましいものであること(昭和45年10月1日発基第115号)。 規則第3条は家内労働の性格上、委託者と家内労働者とが遠く離れている場合が少なくないことが予想されるので、この事情を考慮して規定したものであるから、委託者の便宜のみから一方的に家内労働者にその同意がおしつけられる等のことがないよう委託者を指導するものとする。なお委託者が家内労働者の同意を得て規則第3条各号に掲げる方法により工賃の支払いを行なう場合、当該支払い方法によるための所要の経費は、委託者において負担しなければならないものとする(昭和45年12月28日基発第922号)。 第6条2項の「厚生労働省令」は、複雑かつ変化に富む家内労働の実情にかんがみ、本規定の適用が困難な場合が生ずることを考慮した規定であり、当面「厚生労働省令で定める場合」は予定されていないこと(昭和45年10月1日発基第115号)。 委託者は、家内労働者から申出のあった場合その他特別の事情がある場合を除き、工賃の支払及び物品の受渡しを家内労働者が業務に従事する場所において行なうように努めなければならない(第7条)。 家内労働は雇用労働の場合と異なり、委託者の営業所と家内労働者の作業場とが遠く離れている場合があり、工賃の支払および物品の受渡しが委託者の営業所で行なわれると、家内労働者に経済的および時間的負担がかかるおそれがあるので、原則としてこれらを家内労働者の作業場所で行なうよう努めなければならないこととしたものであること(昭和45年10月1日発基第115号)。 本法は、工賃の非常時払いについて規定していないが、家内労働者又は補助者が出産、疾病、災害等非常の場合の費用にあてるため既往の労働に対する工賃の支払いを請求する場合には、労働基準法第25条の趣旨に準じて、委託者が当該工賃を支払うよう指導するものとする(昭和45年12月28日基発第922号)。
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