失われた被害者着衣
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 04:44 UTC 版)
次に、検察側が提出した鑑定結果では、遠藤車ラジエーター付近から発見された布目痕 (7, 8) は被害者の着用していたポロシャツのものと一致したとされている。これに対し弁護側は、遠藤車のラジエーターコアサポーターは地上から44センチ、ラジエーターシュラウドは地上から57センチの高さにあるが、路面に横臥していた被害者の、なおかつアノラックの内側に着用していたポロシャツの布目痕がそのような高さまで付着することは不自然である、と反論した。 また、右前輪周辺からの毛髪様付着物 (4) についても、新潟県警本部科学捜査研究所(鑑識課)はこれを人の眉毛ないし睫毛であると鑑定している(下表参照)。これについて弁護側は、被害者は遠藤車の進行方向に対して、頭部を左側にして横臥していたのであるから、着衣の痕が発見された車体前面中央部よりも右の位置から被害者の頭部毛髪が発見されることはありえない、と主張した。さらに、公訴事実の中では、遠藤車はその右後輪のみで被害者を轢過したとされているが、直進する遠藤車の前に横臥していた被害者が右前輪の轢過を受けずに右後輪に轢かれるような状況は想像し難い、とも主張した。 弁護側は物証であるポロシャツを再鑑定のため提出するよう検察側に求めたが、被害者の着衣は事件の翌月には遺族へと返却され、すでに焼却されていた。これについて被害者遺族は、警察から着衣の返却を受けた際に「証拠の部分は切り取ってある」と言われた、と後に語っている。加えて、被害者遺体と遠藤車の双方を見分した津川署交通係員は、津川署の本件担当責任者や岩沼署側担当者の主張に反してまで、自身が遠藤車からタイヤ痕を採取したことを公判で否認している。 これらの点から弁護側は、布目痕・タイヤ痕がそれぞれ遠藤車・被害者着衣の痕跡と食い違ったために、検察側は事件から1か月も経たない時期に被害者着衣を処分させたのではないか、と疑念を唱えている。
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