大循環モデルの始まり
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 19:38 UTC 版)
1956年にアメリカの気象学者フィリップス(Norman Phillips)は準地衡風2層傾圧モデルを用いて全球の数値計算を行った。このモデルは気象予測用の数値モデルとかなり似ているが、目的はある一定時間後の波の運動の予測ではなく、むしろ回転水槽実験のように地球上の大気循環の典型的なパターンをコンピュータによる計算で再現することだった。。 彼がこの数値モデルを約1か月分走らせた結果、以下の特徴が現れた。 鉛直方向の位相が西に傾いた波長6000 km相当の傾圧波が東西方向に形成された。 高層で西風が強まってジェット気流が作られた。 地表では緯度によって東風、西風、東風のパターンが形成された。 ハドレー循環、フェレル循環、極循環の3つのセルからなる子午面循環のパターンが現れた。 さらに彼は、数値モデルの中で発達しつつある波のエネルギー交換が、実際の大気中の傾圧過程でのエネルギー交換と定性的に一致していることを見つけた。 フィリップスはイギリスの王立気象学会の大会でこの成果を示したことで、ネイピア・ショー賞の最初の受賞者となった。この結果は数値予報の根拠を強めるだけでなく、数値モデルが実際の大気状態を模した、あるいは仮想的な状態の下での地球規模の大気循環を理解するための実験手段の一つとなり得ることを示していた。この実験の成功により大気循環、引いては気候の研究に新たな手法が加わることになり、そのための数値モデルは大循環モデル(general circulation model)と呼ばれるようになった。 フォン・ノイマン(Von Neumann)とチャーニー(Jule Chaney)は、この数値モデル技術を利用するための研究組織の設立を推進した。これらを受けて数値モデルを用いた大循環の研究に関して大きく分けて3つのグループができた。
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