多能性(pluripotency)とは
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/03/10 12:33 UTC 版)
「万能細胞」の記事における「多能性(pluripotency)とは」の解説
細胞の分化多能性の「pluripotency」は、「totipotency(全能性)」と「multipotency(多分化能、複能性)」の中間の分化能にあたり、生物学者の間では「多能性」と日本語訳されるが、「万能性」「分化万能性」と表記し説明される場合もあり、一般向けの書籍や報道、講演などでは、「万能細胞」と呼称し多用されている。 ヒトの体はおよそ60兆個の細胞で構成されているが、元をたどればこれらの細胞はすべて、たった一つの受精卵が増殖と分化を繰り返して生まれたものである。この受精卵(および、ごく初期の卵割まで)のみに見られる完全な分化能を全能性(totipotency)と呼ぶ。この全能性は、ほ乳類では、初期胚の細胞に見られる多能性(pluripotency)(胎児のすべての体細胞へ分化できる能力)とともに胎盤組織にも分化できる能力をもっている未分化な状態を指す。 受精卵が胚盤胞まで成長すると、胚体外組織を形成する細胞と、個体を形成する細胞へと最初の分化が起こる。後者の細胞は内部細胞塊に存在し、胚体外組織を除くすべての細胞へ分化できることから、これらの細胞がもつ分化能を多能性(pluripotency)と呼ぶ。通常、外胚葉(神経細胞など)、中胚葉(筋肉細胞など)、内胚葉(腸管上皮など)の組織に分化できるかを検証して、多能性の有無を見る。このように身体を構成するすべての種類の細胞に分化する能力(多能性)を有する未分化な細胞が多能性細胞(pluripotent cell)であり、一般呼称的には万能細胞と呼んでいる。 そして、この内部細胞塊から単離培養されたES細胞もまた分化多能性を持ち、個体を構成するすべての細胞に分化できる。ES細胞は、後に研究開発された人工多能性幹細胞(iPS細胞)と共に「万能細胞」の代表的なものとして認識されている。 なお、成人にも神経幹細胞や造血幹細胞など、種々の幹細胞が知られているが、これらの幹細胞のもつ分化能は、神経系や造血系など一部の細胞種に限られているため、多分化能あるいは複能性(multipotency)と呼ばれている。
※この「多能性(pluripotency)とは」の解説は、「万能細胞」の解説の一部です。
「多能性(pluripotency)とは」を含む「万能細胞」の記事については、「万能細胞」の概要を参照ください。
- 多能性とはのページへのリンク