増殖過程
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/22 08:32 UTC 版)
「オルトコロナウイルス亜科」の記事における「増殖過程」の解説
オルトコロナウイルスは動物細胞に感染することによって増殖する。その過程は、おおむね、感染 (1、2)、複製 (3 - 5)、放出 (6) の3段階からなる。 ウイルスエンベロープ表面に露出しているスパイクタンパク質Sおよび、種によってはヘマグルチニンタンパク質 HE が標的細胞表面の分子を認識し、結合する。 TMPRSS2などの宿主プロテアーゼによって、スパイクタンパク質が切断、活性化を受ける。 ウイルスエンベロープと標的細胞の細胞膜が直接融合、あるいはエンドサイトーシスによってウイルスが細胞内に取り込まれる。直接融合の場合、ウイルスゲノムが細胞内に直接導入されるが、エンドサイトーシスによって取り込まれる場合は、一旦ウイルスが含まれたエンドソームが細胞内に作られ、そこでエンドソーム膜とウイルスが融合することによってウイルスゲノムが導入される。エンドソーム内は通常、プロトンポンプでその内部のpHが下げられるが、これはリソソームへの移送とともにウイルスによって阻害される。 コロナウイルスはプラス鎖の一本鎖RNAをゲノムとして持つため、標的細胞の細胞質でそのままmRNAとして機能する。標的細胞のリボソームに結合して、RNA合成酵素を含むウイルスのタンパク質が作られる。ウイルスのRNA合成酵素はウイルスのゲノム配列以外は複製せず、ウイルスのゲノムRNAだけを鋳型にして、マイナス鎖のRNAとして複製する。これにより、ウイルス自身のRNA塩基配列だけを複製していく準備が整う。 マイナス鎖ウイルスゲノムRNAから遺伝子ごとにプラス鎖RNAが合成され、それらが標的細胞のリボソームに結合し、それぞれからウイルスタンパク質が作られる。またマイナス鎖ゲノムから、ウイルスを構成するプラス鎖ゲノムが複製される。そのゲノムは細胞に侵入してきたRNA配列と同じである。 作られたウイルスタンパク質Nがプラス鎖ゲノムRNAに結合してヌクレオカプシドを作り、標的細胞の小胞体 (ER) に取り込まれる。ウイルス膜タンパク質M、スパイクタンパク質S、ヘマグルチニン HE は標的細胞の小胞体の膜に組み込まれる。この小胞体の膜がそのままウイルスの膜となる。ヌクレオカプシドと小胞体の膜(エンベロープになる)からウイルスが作られる。 小胞体からゴルジ体を経由して、エキソサイトーシスによって標的細胞からウイルスが細胞外に放出される。そのとき、ウイルスのスパイクタンパク質はエキソサイトーシスの膜にしがみつくような形で放出される。これにより、ウイルスが複製される。 SARSコロナウイルスの特異的な例では、S上の定義された受容体結合ドメインがウイルスの細胞受容体であるアンジオテンシン変換酵素2 (ACE2) への結合を仲介する。
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