アンジオテンシン変換酵素2とは? わかりやすく解説

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アンジオテンシン変換酵素2

(ACE2 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/15 08:11 UTC 版)

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ACE2
PDBに登録されている構造
PDBオルソログ検索: RCSB PDBe PDBj
識別子
記号ACE2, ACEH, angiotensin I converting enzyme 2
外部IDOMIM: 300335 MGI: 1917258 HomoloGene: 41448 GeneCards: ACE2
遺伝子の位置 (ヒト)
染色体X染色体[1]
バンドデータ無し開始点15,561,033 bp[1]
終点15,602,148 bp[1]
RNA発現パターン


さらなる参照発現データ
オルソログ
ヒトマウス
Entrez
Ensembl
UniProt
RefSeq
(mRNA)

NM_021804
NM_001371415

NM_001130513
NM_027286

RefSeq
(タンパク質)

NP_068576
NP_001358344

NP_001123985
NP_081562

場所
(UCSC)
Chr X: 15.56 – 15.6 MbChr X: 164.14 – 164.19 Mb
PubMed検索[3][4]
ウィキデータ
閲覧/編集 ヒト閲覧/編集 マウス

アンジオテンシン変換酵素2英語: Angiotensin-converting enzyme 2 : ACE2)は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に属する酵素で、アンジオテンシン変換酵素(ACE)の相同体である[5]

総説

アンジオテンシン変換酵素2
識別子
EC番号 3.4.17.23
データベース
IntEnz IntEnz view
BRENDA英語版 BRENDA entry
ExPASy NiceZyme view
KEGG KEGG entry
MetaCyc metabolic pathway
PRIAM profile
PDB構造 RCSB PDB PDBj PDBe PDBsum
テンプレートを表示

ACE2はACEと構造が類似しているものの別物であり、ACE2は主にアンジオテンシンIIからアンジオテンシン-(1-7)への変換を行って血圧上昇のレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制する[6]。ACE2には敗血症などによる肺損傷からの保護作用がある[7]。またACE2は小腸上皮においてB0AT1と結合し、トリプトファンを吸収する中性アミノ酸輸送体として動作し、これによって抗菌ペプチドが発現されると見られている[8]。ACE2ノックアウトマウスは腸炎を引き起こすが、トリプトファンまたはニコチンアミドの摂取によってこの腸炎を軽減できる[8]

またACE2で生成されるアンジオテンシン-(1-7)は心筋梗塞モデルラットでの実験において心臓の保護作用があることが確認されている[9]。ただしアンジオテンシン-(1-7)の投与は左室収縮能が悪化していた[9] (なお左室機能低下の急性冠症候群 (ACS)にはアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬 (ARB)が有効とされる[10])。

ACE2は十二指腸小腸胆嚢腎臓精巣に高く発現しており、副腎結腸直腸精嚢に低く発現している[11]

ACE2はアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)によって抑制されない[6]。ACE2活性化剤としてはオルメサルタンが存在する[6]

コロナウイルスの宿主細胞受容体としての働き

肺炎などを引き起こすSARSコロナウイルスおよび2019新型コロナウイルスはACE2を宿主細胞受容体として利用する。増殖したSARSコロナウイルスはACE2の発現を低下させ、急性肺不全など重大な症状を引き起こす[12]。そのためSARSに対するリコンビナント(組み換え)ACE2の投与がマウスにおいて研究されており[7]、また発見された大量生産しやすいバクテリア由来ACE2様酵素も症状への効果が期待されている[13][14]

ACE/ACE2発現に影響するもの

煙草のニコチンは短期的にはACEの発現か活性を増加させ、一方でACE2の発現か活性を減少させ[15]、血圧を上昇させる。しかし、喫煙者及び元喫煙者はACE2の発現が増えているとする査読前論文が存在する[16]。また、喫煙者及び元喫煙者は上腕収縮期血圧が普通なものの、中心収縮期血圧が高いとの報告もある[17]

脚注

注釈

出典

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c GRCh38: Ensembl release 89: ENSG00000130234 - Ensembl, May 2017
  2. ^ a b c GRCm38: Ensembl release 89: ENSMUSG00000015405 - Ensembl, May 2017
  3. ^ Human PubMed Reference:
  4. ^ Mouse PubMed Reference:
  5. ^ 小堀, 浩幸 (2010). “腎内アンジオテンシンⅡ産生機構”. 日本腎臓学会 52-2: 92-100. https://www.jsn.or.jp/journal/52_2_1451.php 2020年6月3日閲覧。. 
  6. ^ a b c 田野中浩一、丸ノ内徹郎「アンジオテンシン変換酵素2」『日本薬理学雑誌』第147巻第2号、日本薬理学会、2016年、 120-121頁、 doi:10.1254/fpj.147.1202020年4月1日閲覧。
  7. ^ a b Imai, Yumiko (2005). “Angiotensin-converting enzyme 2 protects from severe acute lung failure”. Nature 436: 112–116. doi:10.1038/nature03712. https://www.nature.com/articles/nature03712 2020年4月1日閲覧。. 
  8. ^ a b Hashimoto, Tatsuo (2012). “ACE2 links amino acid malnutrition to microbial ecology and intestinal inflammation”. Nature 487: 477–481. doi:10.1038/nature11228. https://www.nature.com/articles/nature11228 2020年4月1日閲覧。. 
  9. ^ a b アンジオテンシン-(1-7)の心保護作用、動物実験で示唆 日経メディカル 2002年4月8日
  10. ^ 急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版) P.55 日本循環器学会 2018年
  11. ^ Tissue expression of ACE2 Human Protein Atlas英語版
  12. ^ Kuba, Keiji (2005). “A crucial role of angiotensin converting enzyme 2 (ACE2) in SARS coronavirus–induced lung injury”. Nature Medicine 11: 875–879. doi:10.1038/nm1267. https://www.nature.com/articles/nm1267 2020年4月1日閲覧。. 
  13. ^ 新型コロナ対策に新酵素‐医薬基盤研が発見 薬事日報 2020年3月3日
  14. ^ 新型コロナウイルス受容体ACE2と同じ機能を持つ微生物酵素B38-CAPを発見 医薬基盤・健康・栄養研究所 2020年2月27日
  15. ^ Joshua M. Oakes; Robert M. Fuchs; Jason D. Gardner; Eric Lazartigues; Xinping Yue (2018). “Nicotine and the renin-angiotensin system”. American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology (American Physiological Society) 315 (75): R895–R906. doi:10.1152/ajpregu.00099.2018. https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpregu.00099.2018 2020年4月10日閲覧。. 
  16. ^ Tobacco-Use Disparity in Gene Expression of ACE2, the Receptor of 2019-nCov Preprint 2020年
  17. ^ Junichi Minami; Toshihiko Ishimitsu; Masam Ohrui; Hiroaki Matsuoka (2009). “Association of Smoking With Aortic Wave Reflection and Central Systolic Pressure and Metabolic Syndrome in Normotensive Japanese Men”. American Journal of Hypertension (Oxford Academic) 22 (6): 617–623. doi:10.1038/ajh.2009.62. https://academic.oup.com/ajh/article/22/6/617/241945 2020年4月10日閲覧。. 



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