境界上の離散化のみで近似解が得られる
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/19 10:04 UTC 版)
「境界要素法」の記事における「境界上の離散化のみで近似解が得られる」の解説
境界要素法の最大の特徴は、対象とする問題によっては「境界上の離散化のみで近似解が得られる」ことにある。境界上の離散化は、3次元問題ならば曲面上、2次元問題ならば曲線上で行われる。そのため、有限要素法のように領域内の離散近似が必要な解法と比べ、離散化に必要な要素や節点の数が少なくて済む。 境界上の離散化だけで問題が解ける場合としては、静的問題・定常問題では ラプラス問題、線形弾性問題、定常波動問題などのように、線形問題で離散化の際に用いられる基本解が解析的に厳密に得られ、かつ内部ソースや物体力のような支配方程式の非同次項が存在しない場合である。ただし、支配方程式が非同次項を含んでいても常にこの特徴が失われる訳ではなく、非同次項の種類によっては非同次項を含む領域積分を境界積分に変換できる場合もある(例:線形弾性問題における重力の作用)。 時間発展型問題において境界上の離散化のみで近似解を得るためには、線形問題の際に課された条件の他に、時間に関する離散化方法にも注意が必要である。具体的には、与えられた問題に対応する時間と空間に関する積分方程式(時間域積分方程式)を定式化の出発点とし、空間・時間双方を離散化した上で、当該の定式化の下での基本解と初期条件との領域積分(定式化の結果として残る積分項)が消滅するか、または境界積分に置換可能な場合に限り、時間発展問題の境界要素解析でも境界上の離散化だけで近似解が得られることになる。有限要素解析や差分計算の場合のように、時間方向の離散化を時間積分法で近似的に処理すると、解析における各時刻において現時刻での場の値と基本解とを含む領域積分が生じ、上述の特徴は失われてしまうことになる。 なお、境界要素法は、幾何学的非線形問題や材料非線形問題のように、領域内部で満たすことを求められる支配方程式や構成方程式そのものに非線形性がある場合でも近似解を得ることが可能ではある。しかし、定式化の取り扱いの中で領域積分が副次的に生じ、境界要素法の最大の利点である「境界上の離散化だけで近似解が得られる」点が失われてしまい、現在ではあまり用いられない。
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