吉備公文選(もんぜん)をよむ事
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「安倍晴明物語」の記事における「吉備公文選(もんぜん)をよむ事」の解説
(承前) 天子(玄宗)は「吉備は梁の昭明太子が編纂した『文選』を知らないだろう。これを読ませて、音読できないときは殺せ」と命じた。その夜、またもや吉備公の元に仲麿の鬼が現れ、「明日は必ず『文選』を読まされる。この本はたやすく読めるものではない。天子は毎日読んでいるから、おまえはそれを聞け」と言う。吉備公は鬼に背負われ天子の元に赴き『文選』を読むのを密かに聞いた後、宿舎に戻り眠りについた。翌朝、天子は吉備公を召して『文選』を読ませるが、吉備公は淀むことなく流麗に読み終えた。天子をはじめ公卿臣下全員が感心し、「日本は小国だが、このように才知にたけた者がいるのか」と褒め称えた。 しかし『文選』を簡単に読まれたことを悔しく思った天子は、「宝誌和尚の書いた日本の未来を予言した詩『野馬台之詩(やばたいのし)』を読むことはできまい。この詩は非常に難解で唐へ密かに伝えられたものの、自分も読むことができず、これまでに読むことができたのはただ一人のみ。これを吉備が読めなかったときは殺す」と言い渡す。その夜、再度鬼が吉備公の元に現れ、明朝野馬台之詩を読むという試練が与えられるという話をしたが、今度は鬼もこれを打開する策を持たず、「日本の神仏に祈れ」と言い置いて消えてしまう。吉備公は驚き呆然としたが、「心を込めて祈れば仏の御利益もあるはずだ」と若い頃より信奉してきた大和長谷寺の観音に祈った。しばらく微睡んでいると、枕元に老僧が現れ、「我は長谷寺の観音である。なんじの真摯な祈りに応え夢に現れている。安心して明日の試練に臨め。我は蜘蛛の姿に変じて『野馬台之詩』の文字の上に現れる。それから糸を出して文字の上巡るので、その糸に従って読め」とお告げを残した。目を覚ました吉備公は、歓喜の涙を流して観音の名を唱えた。
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