句構造文法における動詞句
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/17 21:44 UTC 版)
句構造文法では、動詞句は動詞または助動詞を主要部とする句であり、単独の動詞でも動詞句として扱われる。句構造文法においては、定形動詞句と非定形動詞句の両者が構成素として認められており、特に区別はされない。この定義における動詞句は、伝統的な文法で述部と呼ばれるものに相当する。 動詞句に含まれ得る要素にはその他、指定部(specifier)・補部(complement)・付加部(adjunct)がある。 句構造文法における補部は、学校文法における補語とは異なる概念である。動詞句にとっての補部とは、主要部動詞が要求する項のうち、動詞句の内側に位置するものを指す。補部の数と種類は主要部動詞の性格によって決まり、例えば名詞句や形容詞句、補文標識句(英語版)(complementizer phrase、略してCP)などがその役割を担う。一方、付加部とは、それがなくとも文が成り立つ要素、すなわち修飾語句を指す。動詞句を修飾するものには、副詞句や接置詞句などがある。ただし、接置詞句を項の1つとして要求する動詞もあるため(英語の put など)、接置詞句が必ずしも修飾語だとは限らない。 次の例文では、それぞれ、太字部分が動詞句である。 Yankee batters hit the ball to win their first World Series since 2000. Mary saw the man through the window. David gave Mary a book. 例文1には、 hit the ball to win their first World Series since 2000 という動詞句が含まれている。 例文2の動詞句は、主要部動詞 saw と補部名詞句の the man 、そして付加部前置詞句の through the window で構成されている。 例文3の動詞句は、主要部動詞 gave および同動詞が選択(要求)する Mary と a book という2つの補部名詞句によって成り立っている。 1980年代の半ばまたは後半頃までは、動詞句を持たない言語も存在すると考えられていた。そういった言語には、非階層的言語(英語版)と呼ばれる、かなり自由な語順を持つ言語(オーストラリア先住民の諸言語、日本語、ハンガリー語など)や、基本語順がVSO型になっている言語(いくつかのケルト語派言語や大洋州諸語など)が含まれていた。現在は、生成文法の中にも、「全ての言語は動詞句を有する」と考える立場(原理とパラメータ説など)と、「少なくとも、いくつかの言語は、動詞句という構成素を持たない」と考える立場(語彙機能文法など)がある。
※この「句構造文法における動詞句」の解説は、「動詞句」の解説の一部です。
「句構造文法における動詞句」を含む「動詞句」の記事については、「動詞句」の概要を参照ください。
- 句構造文法における動詞句のページへのリンク