原始社会と医療
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/26 02:28 UTC 版)
社会の形成されてゆく中で、個人の死は避けがたい運命として認識されるようになってきたが、その一方で不可避である死を少しでも遠ざけようと、目に見えない(仮想上の)霊的な力を呼び寄せたり遠ざける事で、生命を少しでも永らえさせようと考える人が現れた。 死という現象は、科学的な視点から捉えれば、様々な原因によって死に至っている訳である。しかし、呪術的思考から捉えれば、いわゆる死神等に代表される寿命を司る神や様々な症状を起こさせる霊、または健康な状態に人を保っている精霊などの存在によって影響を受けるとされる。 現在の症候学の萌芽とも言えるこれらの知識体系では、長い年月を掛けて様々な症例に対する知識が収集されると共に、それらを改善する薬草などの情報も、神秘主義というフィルターを掛けられながらではあるものの、丹念に伝承されていった。現代でも未開な民族の間では、これら呪術医の治療行為は、自然崇拝の一端として、それら社会の中で深く信頼されており、また伝承により何世代にも渡って蓄積された医療知識は、特に風土病などに対して治療効果が認められるケースも少なからず見られる。 また呪術医はその霊能力により、原始社会のシャーマン(巫女・祈祷師・占い師といった役職)が兼任しているケースも見られる。災害は「環境が病に冒されている」ために発生すると考えられたため、強力な呪術医は天候や災害といった「自然環境の健康」をも治療できると信じられた地域もあるとされる。 なお近年では環境保護の観点から、環境を擬人化して理解しやすくした上で守ろうという運動も見られる。これらの思想は、前出の「自然環境すら癒やす呪術医」の発想に通じる物があるといえよう。
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