単純なものから複雑なものへ: 分子の観点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 03:57 UTC 版)
「ナノテクノロジー」の記事における「単純なものから複雑なものへ: 分子の観点」の解説
現代の化学合成技術は、小さな分子をほとんどどんな構造にでも配置することが可能な点にまで到達している。今ではその技術を使って様々な薬品や商用ポリマーなどの有益な化学物質を製造している。そこからさらに、単一分子を集めて超分子を望みの形に形成できるかという問題が提起される。 分子を自動的に所定の配置にして望みの組成を得るというボトムアップ方式を分子セルフアセンブリあるいは超分子化学と呼ぶ。そこで重要となるのが分子認識という概念である。分子をデザインするには、非共有分子間力を使って特定の配置や構成をとるように強いる。ワトソン・クリック型塩基対も同じ原理で形成されており、酵素が特定の基質にのみ作用するのも同じ原理によるもので、たんぱく質のフォールディングも同様である。したがって2つ以上の部分が互いにうまくかみ合うようにデザインすることで、全体としてより複雑で有益なものにすることができる。 こうしたボトムアップ方式は同時に多数のデバイスを生産できるためトップダウン方式よりもずっとコストが低くなるが、必要とされる分子の大きさと複雑さが増すと困難さも増すことが予想される。有益な構造のほとんどが、複雑で熱力学的にもあり得ない原子の配置を必要としている。しかし生体内では分子認識に基づくセルフアセンブリが様々な場面で行われており、塩基対や酵素と基質の相互作用が例として挙げられる。ナノテクノロジーの目標の一つは、そういった自然界の仕組みを応用して新たな有益なものを構築することである。
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