医療崩壊の社会問題化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 05:46 UTC 版)
こうした制度上の「ひずみ」が具体的な社会問題となって現れたのが、2007年頃からのいわゆる救急搬送の「たらい回し」の事例の増加である。ただし、マスメディアによる「たらい回し」という表現は、あまりにセンセーショナルで実態を正確に捉えたものではなく、実際には、救急車は止まったままで、各病院に照会をかけており、照会件数の多い場合をマスメディアは「たらい回し」と呼んでいたのである。しかも、受け入れ先が見つからない原因としては、「処置中」「医師不在」「ベッドがない」「専門外」「専門医がいない」などが多く、「医療安全」の問題のほか、医療政策・医療行政上の問題を背景にしたものであった。 また、高度医療化に伴い高価格の医療機器導入の負担や、新病院建設にかかった債務、度重なる医療制度改革による診療報酬減少に伴う医療収入減少等により、病院の経営危機、倒産、自主廃業に追い込まれるケースもみられるようになった。病院の閉鎖には、経営上の問題のほか、医師不足の問題とも密な関係にある。たとえば、後述の初期臨床研修義務化を引き金に、地域の病院に医師を派遣してきた大学医局が主導するかたちで、医療安全や勤務医の負担軽減を理由に、一つの科を一人で診ている病院から医師を引き上げ集約化を行い医師不足に対応するケースが増えている。しかし病院の集約化を行っても、必ずしも予定通りに医師が集まらなかったり医師の退職が相次ぐなどして、その地域の医療提供が成り立たなくなり、地域や科によっては身近なところに診療できる医院・病院が無くなるという事態にまで至っている。 このなかでは、地域住民からの誹謗中傷やマスメディアの報道による心労により医師が退職に追い込まれ地域医療が崩壊した事例もみられた。内科医、麻酔科医など特定の専門科の負担も大きく集団退職するケースも増えており、廃院の転帰を取る場合が散見されるようになっている。 こうした社会現象を背景に、マスメディアの報道も、医療従事者・病院を一方的に非難する論調に変化が見られるようになった。 兵庫県では統合・新設される北播磨総合医療センター(小野市市場町)において、前身の小野市民病院の医師は2012年12月時点で33人いたが、2013年4月には18人まで減少すると見込まれている。内科に関しては、15名から4名に減少し、新規入院患者の受け入れは困難とされている。
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