化学分解法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/16 00:38 UTC 版)
「DNAシークエンシング」の記事における「化学分解法」の解説
アラン・マクサムとウォルター・ギルバートが1977年に報告した手法で、マクサム-ギルバート法ないしギルバート法と呼ばれる。DNA断片中の特定の塩基を試薬により修飾することで、その部位のリン酸ジエステル結合が切れやすくなることを利用している。試薬の作用条件を調節することでDNA断片1分子あたり平均1ヶ所だけが修飾されるようにすると、特定の塩基で切断された様々な長さのDNA断片を得ることができる。配列を決定したいDNA断片の端を32Pやビオチン、蛍光色素などで標識しておき、フィルムを感光させたり酵素的に色素生成させて検出する方法が一般的である。 元々は以下のような試薬を利用した組み合わせで判別していた。ほかにも様々な塩基特異的な切断反応が考案されている。 ジメチル硫酸 プリン塩基(グアニン・アデニン)をメチル化する。ここでメチル化されたプリン塩基のグリコシド結合は不安定で塩基が遊離しやすく、その後アルカリ条件で加熱することでリン酸ジエステル結合が切断される。グアニンはアデニンと比べて5倍速くメチル化される一方、グリコシド結合はグアニンよりアデニンの方が不安定である。そこで塩基を遊離させるときに、強い条件(高温中性)にするとグアニン塩基で切断されやすく、弱い条件(低温酸性)にするとアデニン塩基で切断されやすい。この2つの反応産物を見比べることでグアニンとアデニンを判別する。 ヒドラジン ピリミジン塩基(シトシン・チミン)を開裂させる。そのままだと両塩基で切断されるが、高濃度の塩化ナトリウムが存在するとチミンの開裂が阻害されてシトシン塩基だけで切断される。この2つの反応産物を見比べることでシトシンとチミンを判別する。 水酸化ナトリウム アデニン塩基とシトシン塩基を開裂させる。ジメチル硫酸の弱い条件の代わりに用いる。 この方法は充分な量のDNAと、ヒドラジンなど取り扱いに注意を要する試薬が必要という欠点がある。したがってサンガー法が改善されるとともに、次第に一般的なシークエンスの手法としては用いられなくなった。しかし酵素反応を介さずに直接DNA分子の解析ができることから、修飾塩基を含むような配列決定や、タンパク質との相互作用を検出する目的で使われている。
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