化学分野での成果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/20 06:42 UTC 版)
「ルイ・パスツール」の記事における「化学分野での成果」の解説
パスツールは、ワインの澱からとれる溶液は、偏光を入射すると透過した光の偏光面を時計回りに回転させるが、ワインの澱からとれたものと同じ分子式を持つものを人工的に合成された溶液では、この偏光面の回転がおこらないことに気付いた。 そこで彼は、人工的に合成された酒石酸の塩(酒石酸ナトリウムアンモニウム)の小さな結晶を調べていて、結晶には非対称な2種類の形があり、それぞれが鏡像になっていることに気が付いた。退屈な分離作業の結果、2種類の酒石酸の塩が得られた。この塩の一方の溶液では、偏光面を時計回りに回転させるのに対し、他方は反時計回りに回転させるのだった。そして、これら2種類を等量混合したものは、偏光に対して何の効果も及ぼさなかった。さらに、等量混合したものに微生物を混入すると、偏光面は片側のみになった。 このことから、パスツールは、酒石酸の分子は非対称な形をしており、左手の手袋と右手の手袋のように、互いに鏡像の関係にある2種類の形が存在するということ、天然物であるワインから取れたものと違い、人工的に合成されたものでは、互いに鏡像の関係にある2種類の酒石酸の塩が等量含まれているということ、を正しく推論した。後年、この実験のファント・ホッフによる詳細な追試により、はじめて炭素原子は立体的な正四面体構造を取ることが判明するのである。このように、光学分割により初めてキラル分子の存在を実証したことは大きな実績であったが、その後パスツールはさらに有名な業績を成し遂げる生物学・医学の分野へと進んでいった。
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