加重の理由
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/19 06:37 UTC 版)
日本の刑法では、通常の過失致死罪は「50万円以下の罰金」、過失傷害罪は「30万円以下の罰金又は科料」に対し、業務上過失致死傷罪は「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」と、通常のものよりも重い刑が定められている(自動車による類型については後述#交通事犯の特則を参照)。 業務上の過失犯がなぜ通常の過失犯より重く処罰される理由は、通説・判例によれば、業務者は人の生命・身体に対して危害を加えるおそれがある立場にあることから、このような危険を防止するため政策的に高度の注意義務を課す必要があるため(最判昭和26年6月7日刑集5巻7号1236頁参照)、と説明される(政策説)。業務者は重大な結果を招きやすいのだから、注意を怠った場合には重く処罰されることを予告して、より慎重な行動を促すということである。この他にも、業務者は注意能力が普通の人に比べて高いのだから、注意義務違反をした場合には違反の程度も高いため重く処罰される、などとも説明される(義務違反重大説)。 これに対して、重過失致死傷罪等による過失の各加重類型が整備された現在、業務概念の意味を解釈する作業は裁判所に実益のない努力を強いるものであり、また業務を冠することにより単純過失致死罪に比べて刑の加重類型とする理由を直ちに導き得るとは言えず、むしろこのような業務を理由とする加重類型の存することは、裁判所をして「余りにも喜ばしくない形式に堕せしめ、また実質上理由なき区別に没頭せしめた」との批判もある(最判昭和60年10月21日、補足意見)。
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