制度的持続
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 08:57 UTC 版)
福祉レジーム論は、福祉国家の発展における労働組合や社会民主主義政党(あるいは社民政党と競合するカトリック政党)の主導性を重視している。しかし、ポール・ピアソンは、マーガレット・サッチャー政権下のイギリスで労組の弱体化が進展し、アメリカではもともと労組が脆弱であるにもかかわらず、その両国ですら1980年代では新自由主義が主張するほどには社会保障の削減に成功しなかったことを指摘している。これは、社会保障制度が1度確立すると利益集団のネットワークが構築されて社会保障の削減に対する抵抗が生じ、また、受給者の反発を恐れる政治家も福祉政策の縮減を忌避するためである。よって、福祉国家の形成では経済レジームや政治的党派性などのマクロ要因が重要(福祉レジーム論)であったが、福祉国家の縮減では非難回避の戦略の成否が重要になる、とピアソンは論じている。具体的には、 非難の大きい争点を外すように課題設定する。 損失を伴う政策に対して積極的な意味づけを与える。 損失を伴う政策に対して代償政策を実施する。 政策決定者の可視性を低下させる(政策決定を官僚、諮問機関、地方自治体に委ねる、など)。 政策効果の可視性を低下させる(施行の先送りや段階的施行、など) 利害の異なる集団間の対立を煽ることで非難の矛先が向かないようにする。 超党派で合意を形成して政策を実行する。 などが挙げられる。
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