制度的保障とは? わかりやすく解説

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せいどてき‐ほしょう〔‐ホシヤウ〕【制度的保障】

読み方:せいどてきほしょう

憲法上、個人基本的人権には属さないが、一定の制度保障することによって、内容的に国民の権利保障する関係にあるもの。地方自治婚姻家族私有財産制など。


制度的保障

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2014/04/11 03:57 UTC 版)

制度的保障(せいどてきほしょう、ドイツ語: institutionelle Garantie, Institutsgarantie )とは、憲法における人権保障理論の一つ。一定の客観的制度の保障を憲法において定め、間接的に人権を保障しようとする理論である。個人の基本的人権に属するものではない。ドイツの法学者、カール・シュミットヴァイマル憲法において提唱したのが始まりである。

例えば「大学の自治」という制度を定めれば、「学問の自由」が確保される。本理論の趣旨は、公権力、特に立法による人権制限から制度の核心部分を守ることにより、国民の基本権の保障に資する点にある。なお、絶対不可侵な個人の人権とは違い、制度的保障は国家等の存在を必要とするが、根幹を揺るがすような制度の立法は認められない、とする。ただし核心部分以外の周辺部分については立法による制限も認められる、とする。

しかしながら、この理論の根本的な弱点は、核心的部分と周辺部分との区分は概念的なものにとどまり、実際の運用のいかんによって、核心的部分と周辺部分とはいかようにも変容しうる点、周辺部分に対する制限に明確な限界は設定されておらず、両者の組み合わせによって、立法者による制約は容易に核心的部分をも無際限になしうるところにある。

戦後のドイツ憲法(ボン基本法)でも、このカール・シュミット理論の影響が大きいとされてきたが、現代ではむしろ「基本権に根拠を持つ生活領域の保障」という制度的保障概念を基軸として、その主観的要素としての「権利」と客観的要素としての(広義の)「法制度」ないしは「社会システム」がいかに配分され、構築されるべきかという議論が盛んであり、そしてその根幹となる部分は立法者の立法義務に属するという理解が一般的となっている。その意味で、同じ「制度的保障」の語が用いられていてもその意味内容は大きく異なるので、注意が必要である(特にカール・シュミットのそれを正確に表現するときには「連結的補充的制度的保障」の語を用いる論者もいる)[1]

日本国憲法における規定として、具体的には政教分離日本国憲法第20条第3項)・大学の自治同第23条)・私有財産制同第29条1項)・地方自治同第8章)など[2]が挙げられることが多いが、上述のカール・シュミット理論に内在する弱点(特に、カール・シュミット理論とその実際の運用においては、私有財産制はほとんど無制限に核心部分とされて社会権保障のための立法を妨害した反面、地方自治制度は逆にほとんど無制限に周辺部分と理解されてナチス体制の地ならしを演ずる結果となった)と、日本国憲法とボン基本法とのさまざまな相違から、この概念を用いることなく理解しようとする試みも少なからずなされている。

脚注

  1. ^ なお、ついでながら、冒頭に掲げられた「制度的保障」のドイツ語表記は、カール・シュミットの理論においては、公法・私法二元論に基づいて厳密に区分されており、前者を「制度的保障」後者を「制度保障」と訳し分けるのが、かつては通例とされていた。また、類似の用語としてEinrichtungsgarantieもあるが、これは公法・私法二元論を止揚し、統一して理解しようとする論者の間から使われ始めた。しかし、現在では本文の通り制度的保障概念そのものが変容しているため、文脈によっても異なるが、この三つの用語は併用して使われる傾向にある。
  2. ^ 野中・中村・高橋・高見著『憲法I(第4版)』有斐閣:p.210

制度的保障

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 04:00 UTC 版)

人権」の記事における「制度的保障」の解説

制度的保障とは、一般には、議会憲法定め制度創設し維持することを義務づけられ、その制度本質的内容侵害することが禁じられているものをいう。制度的保障では直接保障対象制度それ自体であるから個人基本的人権そのものではないが、制度的保障は基本的人権保障強化する意味を有する。 制度的保障として捉えられることがある制度には次のようなものがある。 大学の自治大学の自治法的性格については学問の自由保障するための客観的な制度的保障とする制度的保障論が有力である。 私有財産制度私有財産制度財産権の保障との関連で制度的保障として捉えられることがある。 ただし、日本国憲法第29条第1項財産権の保障)については、客観的法秩序としての私有財産制の制度的保障のみを認め趣旨であるとする説もあるが、多数説は私有財産制の制度的保障とともに個人が現に有する財産権をも個別的に保障していると解している。 政教分離原則政教分離原則信教の自由との関連で制度的保障として捉えられる。ただし、政教分離原則を制度的保障として捉えることは微妙であるとする消極的な見解もある。「制度的保障」を参照

※この「制度的保障」の解説は、「人権」の解説の一部です。
「制度的保障」を含む「人権」の記事については、「人権」の概要を参照ください。

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