初田牛駅とは? わかりやすく解説

初田牛駅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/06 02:40 UTC 版)

初田牛駅
駅舎(2018年9月)
はったうし
Hattaushi
厚床 (7.1 km)
(8.5 km) 別当賀
所在地 北海道根室市初田牛340番地5
所属事業者 北海道旅客鉄道(JR北海道)
所属路線 根室本線(花咲線)
キロ程 406.0 km(滝川起点)
電報略号 ウシ
駅構造 地上駅
ホーム 1面1線
開業年月日 1920年大正9年)11月10日
廃止年月日 2019年平成31年)3月16日
備考 無人駅
テンプレートを表示

初田牛駅(はったうしえき)は、かつて北海道根室市初田牛に所在した北海道旅客鉄道(JR北海道)根室本線(花咲線)の廃駅)である。電報略号ウシ事務管理コードは▲110449[1]。 廃止前までは上下1本の普通列車が当駅を通過していた。

歴史

1978年の初田牛駅と周囲約500m範囲。右が根室方面。短いながら石組み土盛の単式ホームを持つ。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
  • 1920年大正9年)11月10日鉄道省釧路本線(→根室本線)厚床駅 - 西和田駅間延伸に伴い開業、一般駅[2]
  • 1944年昭和19年)12月2日:駅舎改築[3]
  • 1962年(昭和37年)12月9日:同日付で車扱貨物・集荷配達の取り扱いを廃止[3][4]
  • 1964年(昭和39年)4月1日:業務委託駅に変更[3]
  • 1971年(昭和46年)10月2日:貨物・荷物取扱い廃止し旅客駅となる[5]。同時に無人化[3][6]
  • 1972年(昭和47年)4月:隣の厚床駅まで通学する地元中学生のために、釧路行き貨物列車を臨時停車させ、車掌車に便乗しての乗客取り扱いを開始(取り扱い終了時期不明)[7]
    • それまで中学生たちは、当時の上り始発であった6時22分発の列車で通学していたため、学校に到着後教室で1時間半ほど待機する必要があった。特に冬季には暖房がない中での待機であり、話を聞いた生徒の親たちが根室市教育委員会に訴え、教育委員会から釧路鉄道管理局に働きかけてこの措置が実現した。
    • 貨物列車は7時44分に臨時停車し、生徒たちは前もって発行された「貨物列車便乗承認証」を定期券と共に提示して車掌車に乗車することができた[7]
  • 1977年(昭和52年)10月24日:駅舎改築竣工[3]
  • 1987年(昭和62年)4月1日:国鉄分割民営化により、北海道旅客鉄道(JR北海道)へ移管[8]
  • 2018年平成30年)
    • 10月29日:JR北海道が当駅を2019年(平成31年)3月に実施予定のダイヤ改正で廃止する意向を根室市へ通達[9]
    • 11月15日:初田牛地区で廃止について住民説明会。地域住民、JR北海道と根室市の担当者が出席[10]
  • 2019年(平成31年)3月16日:同日実施のダイヤ改正に合わせ、利用者減少に伴い廃止[JR北 1]

駅名の由来

地名より。当地を水源とする川の名称ともなっている。山田秀三によるとアイヌ語に由来する以下の2説があり、いずれも永田方正『北海道蝦夷語地名解』から紹介している[11]

  • ブドウ・採る・いつもする・ところ(川)」を表す「ハッタウㇱイ(hat-ta-us-i)」から[11]
  • 「淵が・ついている・もの(川)」を表す「ハッタㇻウㇱイ(hattar-us-i)」から[11]

山田はこの2説について「どっちが正解なのかは今となっては分からない」としつつ、「古い松浦図[注釈 1]は『ハッタウシ』なので」ということを踏まえて「hat-ta-us-i」説を支持した上で、初田牛川の付近を流れる「和田牛(わったらうし)川」のアイヌ語名とされる「オワタラウㇱイ(o-watara-us-i)[注釈 2]」と相互に混合があったのではないか[注釈 3]、と推測している[11]

なお、他文献では駅名・地名の由来は以下のように紹介されている。

  • 1939年に札幌鉄道局が編纂した『駅名の起源』では「アイヌ語『ハッタ、ウシ』から出たもので(葡萄を採る澤)の義を有してゐる」としている[12]
  • 1973年に国鉄北海道総局が発行した『北海道 駅名の起源』では「オ・ハッタラ・ウシ」(川口にふちのある所)を由来とする、としている[13]
  • 本多『北海道地名漢字解』は「ハッタウㇱ(hat-ta-us)」(いつも・山ブドウを・採る〔処〕)から、としている[14]

廃止当時の駅構造

単式ホーム1面1線を有する地上駅。営業当時は無人駅で、根室駅の管理下にあった。新吉野駅姉別駅と同一形状の待合所を有した。

利用状況

乗車人員の推移は以下のとおり。年間の値のみ判明している年については、当該年度の日数で除した値を括弧書きで1日平均欄に示す。乗降人員のみが判明している場合は、1/2した値を括弧書きで記した。

また、「JR調査」については、当該の年度を最終年とする過去5年間の各調査日における平均である。

年度 乗車人員(人) 出典 備考
年間 1日平均 JR調査
1978年(昭和53年) 10 [15]
1979年(昭和54年) 2,410 (6.6) [16]
1980年(昭和55年) 2,200 (6.0)
1981年(昭和56年) 2,160 (5.9)
1992年(平成04年) (4.0) [17] 1日平均乗降客数8人
2015年(平成27年) 「1名以下」 [JR北 2]
2016年(平成28年) 0.2 [JR北 3]
2017年(平成29年) 0.2 [JR北 4]

駅周辺

駅前(2018年9月)

待合室は北海道道1127号初田牛厚床線から分岐する砂利道の先に位置した。森の中にあり、付近に初田牛地区の集会所があるが民家は疎らである。駅裏には北海道道142号根室浜中釧路線付近へ至る道路があるが、渡線路などは設置されていないため迂回が必要であった。なお、この付近は霧の発生が比較的多い場所であり、駅付近には防霧保安林が設けられている[18]

駅跡については、廃止前の2018年11月15日に初田牛地区で行われた住民説明会の席上で、住民側から「モニュメント的なものの設置」が要望され[10]、その後沿革などが記された記念看板が設置されている[19]

隣の駅

北海道旅客鉄道(JR北海道)
根室本線(花咲線)(廃止時点)
厚床駅 - 初田牛駅 - 別当賀駅

脚注

注釈

  1. ^ 松浦武四郎『東西蝦夷山川地理取調図』のこと。
  2. ^ 「川尻に・岩が・ある・もの(川)」を意味する[11]
  3. ^ 山田は現在の「和田牛」のよみである「わったらうし」や下流の地名「オワッタラウシ」は「o-watara-us-i」の「watara(岩)」が「hattar(淵)」と同義の「wattar」と混合されて生じたのではないか、と解釈したうえで、逆に「hat(ブドウ)」が「hattar」と読まれることも「ありそうなことだ」としている[11]

出典

  1. ^ 日本国有鉄道営業局総務課 編『停車場一覧 昭和41年3月現在』日本国有鉄道、1966年、233頁。doi:10.11501/1873236https://doi.org/10.11501/18732362022年12月10日閲覧 
  2. ^ 内閣印刷局, ed (1920-10-30). “鉄道省告示 第113号”. 官報 (国立国会図書館デジタルコレクション) (2475). https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2954589/5. 
  3. ^ a b c d e 『JR釧路支社 鉄道百年の歩み』北海道旅客鉄道株式会社釧路支社、2001年12月25日、89, 97, 98, 103, 108頁。 
  4. ^ 日誌(昭和37年度12月分)」『鉄道統計月報――昭和37年度12月分』、日本国有鉄道経理局審査統計課、1963年3月、doi:10.11501/2267839 
  5. ^ 「日本国有鉄道公示第408号」『官報』1971年10月2日。
  6. ^ 「通報 ●根室本線西帯広駅ほか6駅の駅員無配置について(旅客局)」『鉄道公報日本国有鉄道総裁室文書課、1971年10月2日、2面。
  7. ^ a b 「通学は貨物列車で」『朝日新聞』1972年4月24日、朝刊、9面。
  8. ^ 石野哲 編『停車場変遷大事典 国鉄・JR編 II』(初版)JTB、1998年10月1日、884頁。ISBN 978-4-533-02980-6 
  9. ^ “「秘境駅」根室・初田牛駅廃止へ JR、来年3月で”. 北海道新聞. (2018年10月30日). オリジナルの2018年10月30日時点におけるアーカイブ。. https://archive.fo/OSgUM 2018年10月30日閲覧。 
  10. ^ a b “初田牛駅廃止 住民説明会開く【根室】”. 北海道ニュースリンク. 根室新聞社 (十勝毎日新聞社). (2018年11月16日). オリジナルの2019年3月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190324114808/http://www.hokkaido-nl.jp/article/8685 2019年3月24日閲覧。 
  11. ^ a b c d e f 山田秀三 (2018-11-30). 北海道の地名. アイヌ語地名の研究 別巻 (2 ed.). 浦安市: 草風館. p. 245. ISBN 978-4-88323-114-0 
  12. ^ 札幌鉄道局 編『駅名の起源』北彊民族研究会、1939年、67頁。NDLJP:1029473 
  13. ^ 『北海道 駅名の起源』(第1版)日本国有鉄道北海道総局、札幌市、1973年3月25日、157頁。ASIN B000J9RBUY 
  14. ^ 本多 貢 (1995-01-25). 児玉芳明. ed (日本語). 北海道地名漢字解. 札幌市: 北海道新聞社. p. 74. ISBN 4893637606. OCLC 40491505. https://www.worldcat.org/oclc/40491505 2018年10月16日閲覧。 
  15. ^ 藤田, 稔 編『国鉄全駅大事典』藤田書店、1980年4月30日、873頁。doi:10.11501/12065814https://dl.ndl.go.jp/pid/12065814 
  16. ^ 根室市 (1985-03-20). “第8編 運輸・通信” (pdf). 昭和59年度根室市統計書: 52. オリジナルの2022-09-11時点におけるアーカイブ。. https://archive.ph/Os5EV. 
  17. ^ 宮脇俊三原田勝正 著、二見康生 編『北海道630駅』小学館〈JR・私鉄各駅停車〉、1993年6月20日、121頁。 ISBN 4-09-395401-1 
  18. ^ 牛山 隆信 『いま行っておきたい秘境駅2』 p.30 自由国民社 2015年12月28日発行 ISBN 978-4-426-12033-7
  19. ^ “初田牛駅跡に記念看板 住民が要望「駅があったこと思い出して」”. 北海道新聞. (2019年7月9日). オリジナルの2019年7月9日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/LlLgL 2019年7月9日閲覧。 

JR北海道

  1. ^ 2019年3月ダイヤ改正について』(PDF)(プレスリリース)北海道旅客鉄道株式会社、2018年12月14日、4頁。オリジナルの2018年12月14日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20181214051017/https://www.jrhokkaido.co.jp/CM/Info/press/pdf/20181214_KO_H31Kaisei.pdf2018年12月14日閲覧 
  2. ^ 極端にご利用の少ない駅(3月26日現在)” (PDF). 平成28年度事業運営の最重点事項. 北海道旅客鉄道. p. 6 (2016年3月28日). 2017年9月25日閲覧。
  3. ^ 根室線(釧路・根室間)」(PDF)『線区データ(当社単独では維持することが困難な線区)』、北海道旅客鉄道、2017年12月8日。オリジナルの2017年12月9日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20171209102705/http://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/senku/pdf/senku/05.pdf2017年12月10日閲覧 
  4. ^ 根室線(釧路・根室間)」(PDF)『線区データ(当社単独では維持することが困難な線区)(地域交通を持続的に維持するために)』、北海道旅客鉄道株式会社、3頁、2018年7月2日。オリジナルの2018年8月19日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20180818152757/http://www.jrhokkaido.co.jp/corporate/region/pdf/senku/05.pdf2018年8月19日閲覧 

関連項目





固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「初田牛駅」の関連用語

初田牛駅のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



初田牛駅のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの初田牛駅 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS