円分拡大の数論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 07:04 UTC 版)
最初の重要な例は、1 の原始 p 乗根 ζ を添加する拡大 K = Q(ζ) である。Kn を 1 の原始 pn+1乗根の生成する K の(したがってとくに C 内の)部分体として、体の塔 Kn (n = 1, 2, ...) の和集合(合成体)を L と置く。このとき、体の拡大 L/K のガロア群は Γ に同型である。これは、拡大 Kn/K のガロア群が Z/pnZ であることによる。 ここから、ガロア群 Γ 上の興味深い加群を取り出すことができる。岩澤は Kn のイデアル類群と、そのシロー p 部分群 In (p-部分)を考えた。このときノルム写像 Im → In (ここで m > n)を考えれば逆系が得られ、その逆極限を I として Γ を I に作用させることができる。その作用を記述することに意味があるのである。 また、以下のような量的な記述ができる: p を素数とし、Kn を塔とする K の Zp 拡大 L に対し、Kn のイデアル類群の p-部分 In(これは有限 p群だから位数は p の冪である)の位数の p の冪指数を en とするとき、適当な正の数 μ, λ と実数 ν および十分大きな n をとれば e n = μ p n + λ n + ν {\displaystyle e_{n}=\mu p^{n}+\lambda n+\nu } という形に表すことができる。 ここでの動機というのは、K のイデアル類群の p 部分こそがフェルマーの最終定理の直接証明における主要な障害となっている、ということがクンマーによって既に特定されていたということによるものである。岩澤の独自性は、「無限大に飛ばす」という新しい着想にあった。 事実として、I は群環 Zp[Γ] 上の加群であり、またこの群環は二次の正則局所環と呼ばれる(その上の加群のそれほど粗くない分類が非常に容易であるという意味で)素性の良い環である。
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