信頼できない語り手の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/01 23:21 UTC 版)
「信頼できない語り手」の記事における「信頼できない語り手の例」の解説
信頼できない語り手を分類する試みには、ウィリアム・リガン(William Riggan)による1981年の研究がある。これは信頼の低い語りのなかでももっとも一般的な一人称視点の語り手に焦点を当てたものである。彼は次のような分類を行った。 悪党(Pícaro) 誇張や自慢の激しい語り手である。古代ローマの劇作家プラウトゥスの喜劇『ほらふき兵士(英語版)』や、近代の例としては『モル・フランダーズ』、『阿呆物語』、『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』などが挙げられている。 狂人(Madman) 自我が不安に陥るのを防ぐために感情を抑圧したり、軽い解離や離人症に陥ったりするなど、防衛機制を働かせているだけの語り手もいれば、統合失調症や偏執病に陥るなど重度のパーソナリティ障害に陥っている語り手もある。自己疎外に陥っているフランツ・カフカの小説の語り手や、タフでシニカルな語りをすることで自分の感情を隠そうとするノワール小説やハードボイルドの語り手も含まれる。 道化(Clown) 自分の語りを真剣に受け止めず、対話や真実といったものを意識的にもてあそび、読者の期待を翻弄する語り手である。『トリストラム・シャンディ』の語り手が例に挙げられる。 世間知らず(Naïf) ものごとの認知が未熟な語り手や、ものごとの認知に限界のある視点に立つ語り手などである。『ハックルベリー・フィンの冒険』や『ライ麦畑でつかまえて』の語り手が例に挙げられる。 嘘つき(Liar) 健全な認知力をもつ成熟した人物だが、過去の不穏当な行動や信用に傷をつけるような行動をあいまいにするため、わざと自分自身のことを事実を曲げて語るような語り手である。フォード・マドックス・フォードの『かくも悲しい話を… 情熱と受難の物語(英語版)』が例として挙げられる。
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