作中の設定について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/30 03:50 UTC 版)
水仙月 水仙月は暦上の月ではなく、賢治が創作した月である。1月説〜4月説まであって同定はされていない。それとは別に、特定の月ではなく文字通り水仙が咲く月を指しており、地方毎に異なって当然とする説もある。雪婆んごの「ここらは水仙月だよ…」という言い方もそれを物語っている。この説に従えば盛岡の水仙月は4月となり、4月4日近辺は統計上、吹雪や寒波の特異日ということが判明している。 一方本文中に「しずかな奇麗な日曜日を、一そう美しくしたのです」という一文がある事から、この水仙月の四日が日曜日であった事が読み取れる。『注文の多い料理店』の刊行は1924年(大正13年)のことであるが、うち水仙月の四日は1922年(大正11年)1月19日に完成した事が判明している。ところがこの年の1月〜4月には4日が日曜日であった月はない。しかし本作の構想期間であったろう前年の1921年(大正10年)においては直前の12月4日が日曜日に該当する。これを以って賢治が意図した水仙月とは12月であったとする説もある。その裏付けとして雪童子たちの会話「こんどはいつ会ふだらう。」「いつだらうねえ、しかし今年中に、もう二へんぐらゐのもんだらう。」が、まだまだ厳しい冬が続く時期である事を示唆していると見る向きもある。仮にこの「今年中」が今季を指すならば3月頃の会話と推測されるが、額面通り年の暮れまでを意味するならばこれは12月の会話以外はあり得ないからである。 なお水仙は品種によっても開花時期が異なり、遅咲きのセイヨウスイセンやラッパスイセンなどは3月~4月、早咲きのニホンズイセンや冬咲きスイセンなどは12月~2月頃の開花である。水仙月の時期はすなわち賢治がどの種の水仙をイメージしたかに依存し、それによっても本作の背景は異なって来る。前者であれば厳しい冬の後に来るであろう雪解けとすぐそこまでに迫った春の訪れを示唆し、後者であれば逆に水仙月の四日イコール厳冬の訪れの象徴と言う、全く正反対の解釈となる。
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