亜硝酸エステルとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 化学 > 化学物質 > エステル > 亜硝酸エステルの意味・解説 

亜硝酸エステル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/01 02:00 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
亜硝酸エステルの構造式(anti体)

亜硝酸エステル(あしょうさんエステル、: Alkyl nitrites)は亜硝酸エステルで、RON=Oの一般式を持つ有機化合物の総称である。トランス型に似たanti体と、シス型に似たsyn体の幾何異性体がある。

性質

常温で気体である亜硝酸メチル以外は、無色ないし淡黄色の液体である。その多くが果実に似た香りを持ち、有機溶剤によく溶けるが、水には溶けにくい性質を持つ。N=O部の伸縮振動による特徴的な赤外吸収は、構造決定に有用である[1]

用途

安価に合成できることから、医薬品試薬ロケット燃料に配合されるなど、用途は広い。

冠血管を拡張し、平滑筋を弛緩する作用があることから、狭心症心筋梗塞に対し即効性のあるアンプル剤として使用される。吸入による血圧低下は亜硝酸イソアミルが比較的高く、ヘキシル、ヘプチル、オクチルの順に、炭素鎖が長くなると減少する。医薬品としての利用は、1879年にイギリスのW.Murrellが使用したのが始まりである[2]シアン中毒解毒剤としても重要であり、注射を必要とせず吸入により投与できる亜硝酸アミルを中心に用いられる。

亜硝酸イソブチルや亜硝酸イソプロピルを含む脱法ドラッグ芳香剤などの名目で一部で販売されているが[3][4]、乱用による急性メトヘモグロビン血症による死亡例がある[2]。動物実験による半数致死濃度(LD50。ラット、4時間吸入)は亜硝酸エチル160ppm、亜硝酸メチル176ppm、亜硝酸プロピル300ppm、亜硝酸イソブチル777ppmなどのデータがある[2]

合成

主に下記の合成法が採られる[5]

主な亜硝酸エステル

化合物名 読み 英名 化学式 分子量 CAS登録番号 融点 沸点 密度 比重 備考
亜硝酸メチル あしょうさんめちる methyl nitrite 61.04 624-91-9 -12℃ 0.991
亜硝酸エチル あしょうさんえちる ethyl nitrite 75.07 109-95-5 17℃ 0.90
亜硝酸イソアミル あしょうさんいそあみる 3-methylbutyl nitrite 117.15 110-46-3 97-99℃ 0.875 異性体混合物は亜硝酸アミルと呼ばれる
亜硝酸イソブチル あしょうさんいそぶちる 2-methylpropyl nitrite 103.12 542-56-3 67℃ 0.870
亜硝酸イソプロピル あしょうさんいそぷろぴる 2-propyl nitrite 130.18 541-42-4 39-39.5℃ 0.844
亜硝酸 t-ブチル あしょうさんたーしゃりーぶちる 1,1-dimetylethyl nitrite 103.12 540-80-7 63℃ 0.8671 ジェット燃料
亜硝酸 n-ブチル あしょうさんのるまるぶちる butyl nitrite 103.12 544-16-1 78.2℃ 0.9114
亜硝酸 n-プロピル あしょうさんのるまるぷろぴる propyl nitrite 89.09 543-67-9 46-48℃ 0.8864 ジェット燃料

関連項目

脚注

  1. ^ 『窒素酸化物の事典』p190
  2. ^ a b c 『窒素酸化物の事典』p194-195
  3. ^ ラッシュ系ドラッグの薬物確認法 (PDF) (東京都健康安全研究センター 研究年報第57号(2006年))
  4. ^ メトヘモグロビン血症の解明 (PDF) Demystifying Methemoglobinemia.
  5. ^ 『窒素酸化物の事典』p191

参考文献


亜硝酸エステル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/11 07:44 UTC 版)

亜硝酸」の記事における「亜硝酸エステル」の解説

代表的な亜硝酸エステルを次に示す。 化合物名読み英名化学式分子量CAS登録番号融点沸点密度比重備考亜硝酸エチル あしょうさんえちる ethyl nitrite CH3CH2ONO 75.07 109-95-5 17 0.90 亜硝酸イソアミル あしょうさんいそあみる 3-methylbutyl nitrite (CH3)2CHCH2CH2ONO 117.15 110-46-3 97-99 0.875 異性体混合物亜硝酸アミル呼ばれる 亜硝酸イソブチル あしょうさんいそぶちる 2-methylpropyl nitrite (CH3)2CHCH2ONO 130.18 542-56-3 67 0.870 亜硝酸イソプロピル あしょうさんいそぷろぴる 2-propyl nitrite (CH3)2CHONO 89.09 541-42-4 39-39.5 0.844 亜硝酸 t-ブチル あしょうさんたーしゃりーぶちる 1,1-dimetylethyl nitrite (CH3)3CONO 103.12 540-80-7 63 0.8671 ジェット燃料 亜硝酸 n-ブチル あしょうさんのるまるぶちる butyl nitrite CH3(CH2)2CH2ONO 103.12 544-16-1 78.2 0.9114 亜硝酸 n-プロピル あしょうさんのるまるぷろぴる propyl nitrite CH3CH2CH2ONO 89.09 543-67-9 46-48 0.8864 ジェット燃料

※この「亜硝酸エステル」の解説は、「亜硝酸」の解説の一部です。
「亜硝酸エステル」を含む「亜硝酸」の記事については、「亜硝酸」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「亜硝酸エステル」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「亜硝酸エステル」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



亜硝酸エステルと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「亜硝酸エステル」の関連用語

亜硝酸エステルのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



亜硝酸エステルのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの亜硝酸エステル (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの亜硝酸 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS