主な研究手段
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 05:02 UTC 版)
表面科学の実験には原理的に避けがたい課題がいくつかある。表面の原子はバルクの原子よりも圧倒的に少ないため、通常の分析手法では表面の信号はバルクの信号に埋もれてしまう。したがって表面の分析を行うためには、表面の信号だけを選択的に測定できるような手法を用いる必要がある。また大気圧下では、気体分子が表面に衝突、吸着、脱離を繰り返しているため、分析対象である表面の状態が測定中にも絶え間なく変化してしまう。そのため実験を超高真空下で、気体分子の量や種類をコントロールして行うことも多い。 固体表面の構造を分析するために、走査型トンネル顕微鏡、原子間力顕微鏡、電子回折、X線回折、透過型電子顕微鏡、走査型電子顕微鏡などが用いられる。また組成を分析するために光電子分光やオージェ電子分光などが用いられる。吸着分子の分析には、上記の方法に加えてケルビンプローブによる仕事関数の測定や各種の振動分光、脱離した分子の質量分析などが行われる。 理論面からの研究にも表面科学に特有の課題がある。表面系のバンド計算や構造最適化では、バルクにも用いられる第一原理計算パッケージが流用される。こういったパッケージでは、実空間法などの例外を除いて、x、y、z方向への周期性が計算の前提となっている。しかし表面では法線方向への周期性が崩れているため、そのままでは計算ができない。そのため、表面のある固体を交互に並んだ原子層と真空層で近似して、法線方向の周期性をモデル系に持たせる近似がよく用いられる(スラブ近似)。また表面-分子系を解析するために、巨大なクラスターの端面として表面をモデル化する場合もある(クラスター模型)。
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