中華航空006便急降下事故とは? わかりやすく解説

中華航空006便急降下事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/12 12:29 UTC 版)

中華航空 006便
急降下の衝撃で損傷した機体
出来事の概要
日付 1985年2月19日
概要 第4エンジンの停止とパイロットの判断ミス
現場 太平洋上空
乗客数 251
乗員数 23
負傷者数 52
死者数 0
生存者数 274 (全員)
機種 ボーイング747-SP-09
運用者 中華航空(現: チャイナエアライン
機体記号 N4522V
出発地 台湾桃園国際空港
目的地 ロサンゼルス国際空港
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中華航空006便急降下事故(ちゅうかこうくう006びんきゅうこうかじこ、中国語:中華航空006號班機事故、英語:China Airlines Flight 006)は、1985年2月19日中華民国台湾)の航空会社であるチャイナエアライン(当時は中華航空)の旅客機太平洋上で急降下した航空事故(重大インシデント)である。なお、英語をそのまま和訳して「チャイナエアライン006便事故」とも言う。

事故当日の中華航空006便

事故の概略

離陸から10時間後、006便は通常の巡航高度41,000フィート(およそ12,500メートル)を航行していた。この時点でサンフランシスコの北西部まで300海里(およそ550キロメートル)の太平洋上を飛行していた。飛行していた空域は雲が立ちこめ、乱気流により対気速度が絶えず変化していた(なお、この高度では許容される最大速度と最小速度の差はわずか30ノットであり、もし最大速度を超過すると機体が損傷する危険があり、最小速度を割ると失速する危険があった)。

当時は自動操縦装置によりマッハ0.85で巡航するようにセットされていたが、途中、第4エンジンの出力低下が発生した。まもなくエンジンはフレームアウト(停止)し、これによりエンジンの推力バランスが崩れ、右に傾きだした。なおも自動操縦で飛行を続けたが、機体の傾斜が大きくなったため手動操縦で修正しようと自動操縦を解除した。この際、速度がマッハ0.75までに減速していたことに気づいていなかったため、直後に機体が失速し、きりもみ状になって垂直降下した。

006便は毎分15,000フィートの猛烈な降下率で落下した。急降下により機体は最大5Gの負荷にさらされ、空中で転覆したかのような姿勢となった。水平安定板が損傷し、尾部からAPUも脱落するなど空中分解する寸前のダメージを受けていた。さらにエンジンへの空気流量が減少したことにより3つのエンジンの出力が低下したことで姿勢の回復が困難となった。しかし11,000フィート(3,400メートル)にあった雲層を突破した時に扉が空中で飛散したため着陸装置が降りて、その空気抵抗によって機体を減速させる効果をえられた。また006便の機長が元軍用機パイロットであったため、この5Gの負荷の中で操縦できたことも幸いであった。さらに雲を抜けたことで海面を視認でき、急降下で失われていた操縦乗務員の視覚感覚を取り戻すことが出来た。そのため006便は9,600フィート(2,900メートル)で水平飛行に回復することが出来た。結局2分半で30,000フィートも降下しており、あと40秒で海面に激突するところであった。

006便は、最寄のサンフランシスコ国際空港へ緊急着陸を要請し、途中27,000フィートまで上昇したが、その後は異変が発生することなくおよそ1時間後に着陸した。この事故では機体に大きな損傷があったほか、重傷2名、軽傷50名を出したが、墜落寸前の事故から奇跡的に全員が生還した。

事故再現図

事故原因

一連の急降下のきっかけとなった第4エンジンの推力低下は航空機関士の排気バルブの設定ミスが原因であった。また、操縦士らはエンジン停止による機体の傾きは自動操縦によって修正されると考えていたが、自動操縦装置はエルロン昇降舵のみを制御し、方向舵の制御は行わないため傾きを修正できなかった。補助翼だけでは機体の傾きを抑えることはできず、どんどん傾斜していくとともに昇降舵は高度を維持しようとしていたためどんどん対気速度が落ちていった。この間、操縦士らは第4エンジンの推力低下の原因特定に注力していたため、機体の傾斜と速度低下に気づいていなかった。傾斜を修正しようと自動操縦を解除した結果、それまで補助翼と昇降舵で維持されていた姿勢制御が解除されたため急激に右に傾き、失速状態に陥り急降下した。さらに雲中で水平線を確認できなかったこと、それにより空間識失調に陥ったこと、異常な傾斜を人工水平儀の故障と誤認したことが重なり、姿勢の回復に時間がかかった。また、操縦士らが長時間の操縦で過労気味であったことが判断を遅らせた要因であったとされた。

この事故を扱った作品

脚注

  1. ^ NTSB report courtesy of University of Bielefeld - Faculty of technology html version by Hiroshi Sogame Safety Promotion Comt. All Nippon Airways

参考文献

  • スタンリー・スチュアート; 十亀洋(訳) 『墜落か生還か-緊急事態発生』 講談社.2000年. ISBN 4062103230

関連項目

外部リンク


中華航空006便急降下事故

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/03 16:21 UTC 版)

チャイナエアラインの航空事故およびインシデント」の記事における「中華航空006便急降下事故」の解説

1985年2月19日台北からロサンゼルスへ向かう途中中華航空006便ボーイング747SP-09型機(機体記号N4522V)の第4エンジン異常により停止。本来なら自動操縦解除し方向舵操作して機体バランスを図るべきところだが、機長らは自動操縦依存し過ぎていたため、やがて機体失速速度まで減速しサンフランシスコ沖合きりもみ状態になって降下した。およそ2分間1万メートル近くも垂直降下したが、途中偶然に展開状態となったランディングギアエアブレーキ働きしたため機体バランス取り戻すことに成功しサンフランシスコ国際空港緊急着陸機体大きく損傷し多数重軽傷者を出したものの、幸い死者は出なかった。 詳細は「中華航空006便急降下事故」を参照

※この「中華航空006便急降下事故」の解説は、「チャイナエアラインの航空事故およびインシデント」の解説の一部です。
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