上五知と円空仏
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/10 05:47 UTC 版)
上五知集落の薬師堂には、僧侶であり仏師であった円空が彫った薬師三尊像がある。像は杉材でできており、中央の薬師如来像は高さ109.5 cm、両脇に控える脇侍は89.5 cmである。円空が制作した伊勢志摩に残る作品の中で代表作の1つに挙げられ、円空の全作品の中でも傑作の1つとされる。円空研究者の間では著名な仏像で、哲学者の梅原猛も見学に訪れ、色紙を残している。1994年(平成6年)11月29日に「木造薬師如来立像及び両脇侍立像」の名称で志摩市(指定時点では磯部町)の有形文化財(彫刻)に指定された。 薬師如来像は薬壺(やっこ)を両手で持った立像で、体と顔の向きが微妙にずれており、体を正面に向けると顔がやや右向きになる。左脇侍は日光菩薩で横長の眉と目で両足先を彫り出し、右脇侍は月光菩薩で粗目の目鼻立ちで両足先を彫り出していない。3つの像でそれぞれ調和を取りつつ、それぞれの像で個性が出ているのが特色である。円空と五知の住民の間にどのような交流があったかは不明であるが、磯部町史編纂委員を務めた中西鉄男は、円空がしばらく薬師堂に滞在している間に村人が米や野菜を差し入れ、そのお礼に円空が薬師三尊像を作ったのではないかと推測している。 薬師堂は上五知の集落を見下ろすような位置にあるが、元は上五知の中ほどにあり、明治の末頃に移転したとされる。薬師堂の内部は四畳半ほどで中央にあるガラス戸の奥に円空仏がある。円空仏は上五知農家組合が所有・管理している。
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