リンダ問題に対する批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/28 19:16 UTC 版)
「合接の誤謬」の記事における「リンダ問題に対する批判」の解説
Gerd GigerenzerやRalph Hertwigなどの批判家は、質問文の言い回しや構成に問題があるとして、リンダ問題を批判している。リンダ問題における質問文は、関連性の公理(maxim of relevance)に準拠していると、被験者は信じているはずだが、会話の公理(conversational maxims)に違反している可能性がある。また、Gigerenzer によると、使用されている言葉は多義的であり、より自然な表現で代替することが可能であると主張している。“probable”という言葉の「高い頻度で発生する」という意味は、数学的確率に相当する。被験者はこの解釈を取るだろうという前提で、調査は行われていたはずである。しかし、”probable”の「もっともらしい」とか「証拠があるかどうか」という意味は、数学的確率という意味には相当しない。“and”という言葉も関連性のある多くの意味を有していると主張されている。これらのような誤解を回避するために、多くの改善がなされたものの、依然として、合接の誤謬という錯誤を払拭するには至っていない。 トベルスキーとカーネマンは、リンダ問題の言語表現に、様々な変更を加えて調査している。選択肢1が、関連性の公理に従う形に変更して提示された場合、つまり「フェミニスト運動に参加しているかどうかは別として、リンダは銀行窓口係である」という形に変更された場合、誤解答率は低下したが、依然として過半数(57%)の解答者が合接の誤謬を犯した。また、可能性(probability)の形式ではなく、頻度(frequency )の形式に変更した場合、誤解答率は低下または消滅した(「錯誤の防止」の項目を参照)。ただし、可能性形式を用いても、頻度形式を用いても、誤解答率に変化は生じないとする研究も存在する。 個別評価形式の調査で見られる錯誤に対しては、問題文の言語表現に不備があるからだとする批判は、当を得ていないだろう 。リンダ問題は、合接の誤謬の具体例としては、最もよく研究・批判されている事例である。 あるインセンティブ付きの調査研究では、より高い認知能力を持っていると、誤解答率は、零にはならないにしても、低下することが示されている。また、被験者が他の被験者と相談することが許されている場合にも、誤解答率は低下することが示されている。
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