ランダウ=リフシッツ方程式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/07/20 15:17 UTC 版)
Jump to navigation Jump to search固体物理学において、ランダウ=リフシッツ方程式(ランダウ=リフシッツほうていしき、英: Landau–Lifshitz equation; LLE)は、固体中の磁場の時間発展を記述する時間と空間に関する偏微分方程式である。方程式の名前はソビエト連邦(現在のロシア)の二人の物理学者、レフ・ランダウとエフゲニー・リフシッツに因む。
ランダウ=リフシッツ方程式
ランダウ=リフシッツ方程式は、異方的な磁性体の磁場を記述する。以下では空間次元を n で表し、時空の次元を (n + 1) と表すことにする。本節の記述は (Faddeev & Takhtajan 2007, chapter 8) に従う:
ランダウ=リフシッツ方程式はベクトル場 S に対する方程式である。ベクトル場とは、言い換えれば Rn + 1 上の R3 値関数のことである。物理学においては、Rn + 1 はユークリッド空間として表すことのできる時間と空間の組に対応し、関数の値は時空上の各点における場の強さと空間的な向きに対応している。ランダウ=リフシッツ方程式は 3 × 3 の対称行列 J に依存する。行列 J は対角行列 であると見なすことが多い。
ランダウ=リフシッツ方程式は以下のハミルトニアン H に対する正準方程式によって与えられる。
ここで、右辺第 2 項 J(S) はベクトル場 S に対する J の二次形式である。上記のハミルトニアンを正準方程式に与えれば、ベクトル場 S に関する偏微分方程式として以下に示すランダウ=リフシッツ方程式が得られる。
特に (1 + 1) 次元の場合、ランダウ=リフシッツ方程式は、
と表される。
同様に (2 + 1) 次元の場合、
(3 + 1) 次元の場合、
と表すことができる。
可積分な例
ランダウ=リフシッツ方程式は一般の場合 (2) には可積分ではないが、(1 + 1) 次元の場合 (3) は可積分である。また、(1 + 1) 次元ランダウ=リフシッツ方程式は J = 0 の場合、連続古典ハイゼンベルク強磁性方程式に帰着する(古典ハイゼンベルクモデルなどを参照)。
関連項目
- 非線形シュレディンガー方程式
- 古典ハイゼンベルクモデル
- スピン波
- マイクロ磁性
- 石森方程式
- 磁石
- 強磁性
参考文献
- Faddeev, Ludwig D.; Takhtajan, Leon A. (2007), Hamiltonian methods in the theory of solitons, Classics in Mathematics, Berlin: Springer, pp. x+592, ISBN 978-3-540-69843-2, MR 2348643
- Guo, Boling; Ding, Shijin (2008), Landau-Lifshitz Equations, Frontiers of Research With the Chinese Academy of Sciences, World Scientific Publishing Company, ISBN 978-981-277-875-8
- Kosevich A.M., Ivanov B.A., Kovalev A.S. Nonlinear magnetization waves. Dynamical and topological solitons. – Kiev: Naukova Dumka, 1988. – 192 p.
ランダウ=リフシッツ方程式
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「ランダウ=リフシッツ=ギルバート方程式」の記事における「ランダウ=リフシッツ方程式」の解説
磁化の動力学についての最初のモデルは、1935年にランダウとリフシッツによって導入された。このモデルは磁場の存在による磁化の歳差運動を表す運動方程式で、磁場の異方性や量子力学的な効果は有効磁場として現象論的に導入される。 ランダウとリフシッツが提案したのは、磁化ベクトルMに対する以下の式である。 d M d t = − γ M × H e f f − λ M × ( M × H e f f ) {\displaystyle {\frac {d\mathbf {M} }{dt}}=-\gamma \mathbf {M} \times \mathbf {H} _{\mathrm {eff} }-\lambda \mathbf {M} \times \left(\mathbf {M} \times \mathbf {H} _{\mathrm {eff} }\right)} この式は一般に、ランダウ=リフシッツ方程式(LL方程式)と呼ばれる。ここで、γは電子の磁気回転比、有効磁場Heffは外部磁場と内部磁場に量子力学的な補正を加えた磁場である。λ > 0 はランダウ=リフシッツ減衰定数(または、制動定数、緩和定数)と呼ばれ、減衰運動の強さを決定するために現象論的に導入された定数である。この定数は、しばしば λ = α γ M s {\displaystyle \lambda =\alpha {\frac {\gamma }{M_{s}}}} とも表される。ここで、α は無次元量の定数、Ms は飽和磁化である。 第1項は有効磁場が磁気モーメントに与えるトルク(ラーモア歳差)に対応する項で、第2項は磁気モーメントとトルクのクロス積方向、すなわち歳差運動の回転軸へ向かって働く減衰項(緩和項)である。 この式は歳差運動項と比べて減衰項が十分に小さいという条件が暗に仮定されている。つまり、減衰定数が十分に小さく、その減衰が時間に依存しないと見なせる現象に対して有効な方程式である。 LL方程式は不可逆過程の熱力学、射影演算子法、ランジュバン方程式などのアプローチを用いても導出されている。
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