ラジカルアニオン
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/17 10:10 UTC 版)
通常の条件下では、S3はほとんど見られないが、ラジカルアニオンS-3は豊富に存在する。これは強烈な青色で、オゾニド(O-3)とのアナロジーでチオゾニド(thiozonide)と呼ばれる。宝石のラピスラズリやウルトラマリンと呼ばれる色素が取れる鉱物の青金石は、S-3を含んでいる。イヴ・クラインが開発したインターナショナル・クライン・ブルーもS-3を含んでいる。オゾニドイオンと等価電子的である。青色は、イオン中でC2A2がX2B1電子状態に遷移し、可視光の橙色領域に相当数610-620 nmに強い吸収帯を持つのが原因である。ラマン周波数は、523 cm-1で、580 cm-1にもう1つの赤外線吸収がある。 S-3は、0.5 GPaの圧力下の水溶液中で安定であり、沈み込みや高圧変性作用の起こる地殻の深部で生成していると期待される。このイオンは、恐らく熱水循環において銅や金が移動するのに重要である。 別の硫黄ラジカルイオンであるS-6を含むリチウムヘキサスルフィドプトレシンのプトレシン溶媒和は、アセトンとS-3の関連ドナー溶媒に解離する。 また、気化硫黄をマトリックス中、亜鉛イオンで還元することでもS-3が得られる。マテリアルは、乾燥させると強い青色になり、痕跡量の水があると緑色や黄色に変化する。 これを作るまた別の方法としては、ヘキサメチルリン酸トリアミド中に溶解したポリスルフィドを用いる方法で、青色になる。また、硫黄と湿った酸化マグネシウムを反応させる方法もある。S-3の確認にはラマン分光が用いられ、これは絵画を非破壊で分析するのにも用いられる。対称伸縮が549 cm1-、非対称伸縮が585 cm1-、屈曲が259 cm1-のバンドである。天然物質はS-2を含むことがあり、これは390 nmの光学吸収、590 cm1-のラマンバンドを持つ。
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