ユダヤ神学、哲学
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「モーシェ・ベン=マイモーン」の記事における「ユダヤ神学、哲学」の解説
モーシェ・ベン=マイモーンが残した最大の成果は、従来の膨大なユダヤ法に関する諸資料を体系的に分類し、かつ法典化した『ミシュネー・トーラー』である。同書はタルムード・アラム語ではなく、ミシュナの形式のヘブライ語で書かれている。『ミシュネー・トーラー』は『ミシュナー註解』と合わせて、ユダヤ人社会で高い評価を受けた。 また、哲学書『迷える人々の為の導き』は、信仰を失った哲学者たちに呼びかけた著作で、その目的は、アリストテレスとユダヤ教神学とを宥和させることにあった。トーラーの聖句に隠された意味についてアリストテレス派と、ファーラービーやイブン・スィーナーらアラブ哲学者の見解を用いて読み解こうと試み、ユダヤ教神学を合理的に解釈した。アリストテレスは月下の世界に関する権威だが、啓示というものは天上の世界に関する権威である、と彼はいう。しかし神に関する知識において哲学と啓示とは合一するのであり、真理の追求は宗教的な義務であるという。イスラム世界では物議をかもし、保守的な思想を持つユダヤ人の一派はモーシェの哲学書を焼却した。その思想はあまりに合理的すぎると批判もされたが、聖書の哲学的解釈の先駆けとして後世に影響を与えた。 後に『迷える人々の為の導き』はラテン語に訳され、アルベルトゥス・マグヌス、トマス・アクィナス、エックハルトらのキリスト教神学者達から高い評価を受ける。 モーシェは自身の思想は理解しがたい高度なものであると考えており、読者が一定の学識を有することを前提として著述を行った。そこには無知な一般大衆を蔑視するモーシェの態度が表れているが、それでも文章の表現は華美と評価されている。もっとも、相手を嘲笑する文体はモーシェ自身も嫌悪しており、極力表現を抑えようと努力していた。
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