モラトリアム期間の出現によるライフコースのずれ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 09:19 UTC 版)
「アダルトチルドレン」の記事における「モラトリアム期間の出現によるライフコースのずれ」の解説
鹿児島国際大学の安藤究は、信田さよ子らアダルトチルドレン言説を広めた専門家たちが、時間軸上での自分の位置の確認に役立つと述べていることから、モラトリアム期間(脱青年期)の出現によって成人期が後ろ倒しになり、既存の年齢規範と新しいライフコースのパターンにずれが生じ、人生における今の自分の位置を確認する社会装置が「機能不全」に陥って、大人になる(青年期から成人期への移行)の際にうまく働かなくなったことが、アダルトチルドレン・ブームの一因ではないかと述べている。 このずれが、若者に「大人なのに大人になれない」不安感を生じさせ、彼らがアダルトチルドレンという言葉に触れた際に、その語感から「大人になれない」自分の問題をそこに重ねる。社会的・経済的要因で長くなったモラトリアム期間における依存欲求・承認欲求と、アダルトチルドレン言説における低い自尊感情から生じた承認欲求は見た目では区別できないことから、背景が異なるにもかかわらず、自分にもアダルトチルドレンの特徴が当てはまるように見えるため、自分もそうではないかと感じる。そして、アダルトチルドレンというフレームで過去を振り返り、近代家族という「機能不全家族」で育ったという問題を発見し、自分はアダルトチルドレンだと確信する。安藤は、こうして治療手段だったアダルトチルドレンの物語は、若者に「自分の物語」として消費され、「真実」化され、社会の中で大量に流通し、ブームになったのではないかと指摘している。
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