モチヴィック・ホモロジーとコホモロジー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/27 15:22 UTC 版)
「モチヴィック・コホモロジー」の記事における「モチヴィック・ホモロジーとコホモロジー」の解説
X を 体 k 上の有限型(英語版)なスキームとする。代数幾何学の重要な目標の一つは、 X の全ての部分多様体について多くの情報を持っている X のチャウ群(英語版)を計算することである。X のチャウ群は、位相幾何学におけるボレル・ムーア・ホモロジー(英語版)が持っているような形式的な性質をいくつか持っているが、いくつかの性質が欠けている。例えば、X の閉部分スキーム Z に対して、局所化系列と呼ばれるチャウ群の完全系列 C H i ( Z ) → C H i ( X ) → C H i ( X − Z ) → 0 {\displaystyle CH_{i}(Z)\rightarrow CH_{i}(X)\rightarrow CH_{i}(X-Z)\rightarrow 0} があるが、位相幾何学ではこれは長完全系列の一部である。 この問題はチャウ群を群の2重次数族である(ボレル・ムーア)モチヴィック・ホモロジー群(最初はブロック(英語版)により高次チャウ群(英語版)と呼ばれていた)に一般化することで解決された。すなわち、任意の体 k 上の有限型スキーム Xと整数 i と j に対して、アーベル群 Hi(X,Z(j)) が存在し、チャウ群はその一部 C H i ( X ) ≅ H 2 i ( X , Z ( i ) ) {\displaystyle CH_{i}(X)\cong H_{2i}(X,\mathbf {Z} (i))} となっている。そして、スキーム X の閉部分スキーム Z に対して、チャウ群の局所化系列で終わるモチヴィック・ホモロジー群の長完全局所化系列 ⋯ → H 2 i + 1 ( X − Z , Z ( i ) ) → H 2 i ( Z , Z ( i ) ) → H 2 i ( X , Z ( i ) ) → H 2 i ( X − Z , Z ( i ) ) → 0 {\displaystyle \cdots \rightarrow H_{2i+1}(X-Z,\mathbf {Z} (i))\rightarrow H_{2i}(Z,\mathbf {Z} (i))\rightarrow H_{2i}(X,\mathbf {Z} (i))\rightarrow H_{2i}(X-Z,\mathbf {Z} (i))\rightarrow 0} が存在する。 実際には、これはヴォエヴォドスキーによって作られた4つの理論、すなわち、モチヴィック・コホモロジー、コンパクト台モチヴィック・コホモロジー、ボレル・ムーア・モチヴィック・ホモロジー(これが今説明したもの)、コンパクト台モチヴィック・ホモロジーのうちのひとつに過ぎない。これらの理論は対応する位相幾何学の理論の多くの形式的な性質を持つ。例えば、体上有限型な任意のスキーム X に対して、モチヴィック・コホモロジー群 Hi(X,Z(j)) は2重次数つきの環をなす。X が次元 n で k 上滑らか(英語版)であれば、ポアンカレ双対 同型写像 H i ( X , Z ( j ) ) ≅ H 2 n − i ( X , Z ( n − j ) ) {\displaystyle H^{i}(X,\mathbf {Z} (j))\cong H_{2n-i}(X,\mathbf {Z} (n-j))} がある。 特に、X が k 上滑らかであれば、余次元 i のサイクルのチャウ群 CHi(X) は H2i(X,Z(i)) と同型である。 k 上の滑らかなスキーム X のモチヴィック・コホモロジー Hi(X, Z(j)) は X 上の層の複体 Z(j) のザリスキー位相での超コホモロジー(英語版)である。(いくつかの性質の証明に置いてはニスネヴィッチ位相(英語版)を使ったほうが簡単であるが、どちらの位相でも同じモチヴィック・コホモロジー群になる。)例えば、j < 0 に対してZ(j) はゼロであり、Z(0) は定数層 Z であり、Z(1) は X の導来圏において Gm[−1] と同型である 。ここで、Gm は乗法群、すなわち可逆な正則関数のなす層であり、ずらし[−1]によりこの層を次数1の複体と思っている。 4つのモチヴィック・(コ)ホモロジーは任意のアーベル群を係数として定義できる。位相幾何学におけるのと同様に、異なる係数同士の理論は普遍係数定理によって関係がつく。
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