ムスリムの伝承
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 10:14 UTC 版)
『預言者伝』には次のような言い伝えが収録されている。 泉の発見は、ハジャルが息子イスマーイールのために水を探し求めているとき、イスマーイールの元を訪れた天使が翼で地面を叩くと、その場所から水があふれ出た伝承に由来する。幼いイスマーイールがのどの渇きに苦しんでいたためハジャルが水を求めて周囲を歩き回っていると、アッラーは天使ジブリール(ガブリエル)を遣わし、ジブリールが大地をかかとで踏むと水がわき出したという。ハジャルは猛獣の声を聞いて息子イスマーイールが心配になり駆けよると、イスマーイールは頬の下に湧き出た泉の水を手ですくって飲んでいた。(イブン・イスハーク『預言者ムハンマド伝(1)』、95頁) イスラームの預言者ムハンマドの時代より十数代前に、メッカの構成員であったジュルフム族とクライシュ族の祖のひとつキナーナ族等との間で争いが生じ、ジュルフム族はマッカから追放される時にカアバから黒石を持ち出し、ザムザムの泉も埋めてイェメンへ去ってしまったという。その後泉は塞がれて所在が分からなくなってしまったが、アッラーからの夢告を受けたアブド・アルムッタリブによって泉が再発見されたという。以後泉はアブド・アルムッタリブの一族が管理し、アブド・アルムッタリブによって泉の水はカアバを詣でる巡礼者に供されるようになったといわれる(イブン・イスハーク『預言者ムハンマド伝(1)』、95-97, 129-135頁)。 Hawting (1980) は、ムスリムの伝承を次のようにまとめている:(1) アブラハムが荒野に遺棄したハガルとイシュマエルのために神が湧き出させたザムザムの泉は、その後いつの間にか消滅した。(2) メッカの聖域管理権を持っていたジュルフム族が罪を犯し、これにより聖域の井戸であったザムザムが消滅し、あるいは隠された。ジュルフム族はメッカを追われ、聖域管理権を喪失した。(3) ジュルフム族により失われた井戸を再発見したのはアブド・アルムッタリブである。(4) アブド・アルムッタリブは井戸の場所を夢で知る。ただしこの夢告のエピソードは井戸の再発見よりもかなり後になった時点で付け加わっている。(5) ザムザムとは別に、カアバの内部に水の出ない縦穴あるいは井戸がある。これは「カアバの井戸」と呼ばれる。
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