ペリ環状反応機構
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/01/13 11:57 UTC 版)
2つのπ電子系が軌道相互作用により環化する反応機構である。反応中間体を生成せず、一段階で環化が起こる。この機構で環化が進行する場合にはウッドワード・ホフマン則に従い、反応の間各分子軌道の対称性は保存される。これによって立体特異的に反応が進行することになる。 ウッドワード・ホフマン則によれば 基底状態(熱反応)におけるペリ環状反応は、電子数 4m + 2 のスプラ面型に相互作用する反応要素の数と、電子数 4n のアンタラ面型に相互作用する反応要素の数の合計が奇数であるとき対称許容である。 1電子励起状態(光反応)におけるペリ環状反応は、電子数 4m + 2 のスプラ面型に相互作用する反応要素の数と電子数 4n のアンタラ面型に相互作用する反応要素の数の合計が偶数であるとき対称許容である。 (m,nは負でない整数である。) エチレン同士が反応してシクロブタンになる系ではそれぞれ電子数2の反応要素2つが反応することになるので、熱反応では一方のエチレンがスプラ面型、もう一方がアンタラ面型で反応する過程([π2s+π2a]過程と表記される)が許容である。しかしこの場合は幾何学的にスプラ面-アンタラ面型の相互作用が不可能なため反応は進行しない。一方、光反応では両方のエチレンがスプラ面型 ([π2s+π2s]) で、または両方のエチレンがアンタラ面型 ([π2a+π2a]) で反応する過程が許容となる。幾何学的にアンタラ面同士での相互作用は不可能であるが、スプラ面同士の相互作用は容易であるので、光によってシクロブタン環生成は容易に起こる。 ディールス・アルダー反応をはじめとする[4π+2π]環化付加は、熱反応において、幾何学的に相互作用が容易なスプラ面-スプラ面型の[π4s+π2s]過程が許容であるので、容易に進行する。 スプラ面-アンタラ面型の環化付加反応は、例は少ないものの立体的な要因によりねじれたπ電子系において見られる。例えばtrans-シクロオクテン誘導体が熱的に二量化してシクロブタン環を作る反応や、ヘプタフルバレンとテトラシアノエチレンの反応が知られている。 ペリ環状反応機構による(2+2+2)環化付加反応は、特定の配置で同時に3つのπ電子系が相互作用しなくてはならない(反応エントロピーが著しく大きい)という要請から、独立した3分子ではほぼ不可能である。しかしπ電子系が分子内で特定の配置に固定されることにより進行する例が知られている。この例としてはノルボルナジエンとアルケンの反応が知られている。 ペリ環状機構による環化付加で位置異性体が生成する可能性がある場合、主な生成物はフロンティア軌道理論で予測できることが多い。
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