ベルヌ条約の限界
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/28 15:11 UTC 版)
「文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」の記事における「ベルヌ条約の限界」の解説
1979年以降に追加改正が発生していない理由として、発展途上国の加盟増加に伴う、先進国と発展途上国の利害対立が挙げられる。この対立構造を受け、ベルヌ条約をこれ以上改正するのではなく、著作権の保護水準を高めることができる国に限定して、ベルヌ条約とは別個の条約を追加作成する方針にWIPOは転換した。こうして「ベルヌ条約の2階部分」と呼ばれるWIPO著作権条約 (1996年署名・2002年発効) が整備され、特にデジタル著作物の保護が強化されるに至った。 その後も包括的な国際条約ではなく、地域協定ないし二国間条約の中に著作権保護が謳われる機会が劇的に増えた。たとえばTRIPS協定はWTO加盟国に自動的に適用されるが、WTOは人口や経済力の大小に関わらず、加盟各国が平等に議決権を有している。こうした理由から特に先進国は、ベルヌ条約やTRIPS協定といった包括的な国際条約ではなく、地域協定や二国間条約といった個別条約を通じ、貿易法や税関法、人権法といった著作権に関連する総合的な観点から、自国に有利な条件を引き出し自国の利益確保に務めている。 このような個別協定を積極的に進めている国・地域として、アメリカ合衆国 (米国) と欧州連合 (EU) が挙げられる。米国は2010年までに少なくとも17本の自由貿易協定 (FTA) を他国との間で締結しており、貿易摩擦の解消と自由貿易促進の文脈で、知的財産権保護についてもFTAに規定を設けている。知的財産に関するFTA上での規定は「TRIPSプラス」とも呼ばれている。EUにおいても、EU加盟国すべてがベルヌ条約に加盟済であるほか、EUとしてWTOに加盟していることから、ベルヌ条約やTRIPS協定といった多国間条約の遵守はあくまで最低限であり、EU法の下でより高水準の著作権保護を求められている。
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