ベクトル束上の平行移動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/07 16:37 UTC 版)
「平行移動 (リーマン幾何学)」の記事における「ベクトル束上の平行移動」の解説
Mは滑らかな多様体、E→Mは ベクトル束であり、このベクトル束Eは、共変微分 ∇を備える。また、γ: I→M は、開区間 Iによって径数づけられた滑らかな曲線である。 X {\displaystyle X} がベクトル束Eの、曲線γに沿った切断であるとする。このとき、 X {\displaystyle X} が、以下を満たせば「 X {\displaystyle X} は曲線γに沿って平行」と言われる。 ∇ γ ˙ ( t ) X = 0 for t ∈ I . {\displaystyle \nabla _{{\dot {\gamma }}(t)}X=0{\text{ for }}t\in I.\,} 点P = γ(0) ∈ Mにおいて、ベクトルe0 ∈ EP が与えられたとする。 大まかに言えば、「e0 の γに沿った平行移動」とは、e0を、曲線γに沿って平行な切断X によって延長したものである。 正確には、点P = γ(0) ∈ Mにおいて、ベクトルe0 ∈ EP が与えられたとき、以下を充たすような「曲線γに沿った切断」、Xは、ただ一つだけ存在する。 (1). ∇ γ ˙ X = 0 {\displaystyle \nabla _{\dot {\gamma }}X=0} (2) . X γ ( 0 ) = e 0 . {\displaystyle X_{\gamma (0)}=e_{0}.} 実際、任意の局所座標系において、上記の(1)は常微分方程式として書き表すことができ、(2)は、その初期条件である。 従って、ピカール・リンデレフの定理(常微分方程式の解の存在と一意性の定理)により、解の存在と一意性が保証される。 したがって、接続∇が定まれば、ファイバーの要素(即ちベクトル)を曲線に沿って移動させる方法が定まり、これは曲線上の任意の点の上のファイバーの間に線形同型を定める。 Γ ( γ ) s t : E γ ( s ) → E γ ( t ) {\displaystyle \Gamma (\gamma )_{s}^{t}:E_{\gamma (s)}\rightarrow E_{\gamma (t)}} 即ち、任意の s , t ∈ I {\displaystyle s,t\in I} に対し E γ ( s ) {\displaystyle E_{\gamma (s)}} (点γ(s)上のファイバー)と、 E γ ( t ) {\displaystyle E_{\gamma (t)}} (点γ(t)上のファイバー)は共に線形空間であるが、 Γ ( γ ) s t {\displaystyle \Gamma (\gamma )_{s}^{t}} は、 E γ ( s ) {\displaystyle E_{\gamma (s)}} と E γ ( t ) {\displaystyle E_{\gamma (t)}} との間の線型同型である。 この線形同型のことを、「曲線γに沿う平行移動」という。この方法で得られたファイバー間の線型同型は、一般には、曲線の選択に依存する:仮にそうでなかった場合には、任意曲線に沿った平行移動を使用して、Mのすべての点上にEの平行セクションを定義出来てしまうので、∇の曲率は0でなければならない。 M上の x を起点とした閉曲線による平行移動を用いれば、確かにx の接ベクトル空間に自己同型を定めることが可能だが、これは必ずしも自明な線型同型とは限らないことに特に注意すべきである。「x を起点とした閉曲線に沿った平行移動によって定まる自己同型」から成る集合は、∇ の ホロノミー群 と呼ばれる 変換群を形成する。この群と、 ∇ の曲率の値との間には密接な関係がある。これは、Ambrose–Singer theoremの一部である。
※この「ベクトル束上の平行移動」の解説は、「平行移動 (リーマン幾何学)」の解説の一部です。
「ベクトル束上の平行移動」を含む「平行移動 (リーマン幾何学)」の記事については、「平行移動 (リーマン幾何学)」の概要を参照ください。
- ベクトル束上の平行移動のページへのリンク