ヘクシャー・オリーンのモデル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/01 15:41 UTC 版)
「貿易」の記事における「ヘクシャー・オリーンのモデル」の解説
古典派傾向のあるリカード・モデルに対する代替案として生まれた。エリ・ヘクシャーとベルティル・オリーンの考えをポール・サミュエルソンが現代的に定式化した。ヘクシャー・オリーン・サミュエルソン理論(HOS理論、HOSモデル)とも言われる。新古典主義的価格形成のメカニズムを国際貿易の理論に援用してエレガントな解決案を提示したことに意味がある。 その基本の考えは次の2点にある。 貿易は、各国に存在する生産要素の比率が異なることから生ずる。 各国は、おなじ生産関数をもつ。 1.より、ヘクシャー・オリーンのモデルは、要素賦存理論、要素比率理論などとも呼ばれる。国際貿易が各国の生産要素の交換であるという観点は、ヴァネクによりヘクシャー・オリーン・ヴァネク理論(HOV理論)に拡張された。 この理論が問題にするのは、国際貿易のパターンが要素賦存の差により決定されるという点である。各国が自国で潤沢な要素を重点的に使った商品を輸出し、自国に欠乏する要素を重点的に使う商品を輸入するという予測を立てる。この理論については、多くの実証研究があるが、その予測能力はきわめて悪いか、時に間違っている。ワシリー・レオンチェフは、産業連関表を用いて経験論的検証を行い、他国に比べて賦存資本比率が高いと予想されるアメリカがむしろ労働集約的商品を輸出する傾向を指摘した(レオンチェフ・パラドックス)。リーマー(E. Leamer)は、レオンチェフの解釈に反対して、多数の生産要素を考慮するHOVモデルによれば、要素賦存が貿易パターンを説明していると結論した。しかし、トレフラーらは、その後の研究において、(1)HOV理論が予測する貿易パターンはくじ引き(硬貨投げ)と同じ程度の予測能力しか持たないこと、(2)HOV理論は、各国の間の貿易量の大きさを正しく予測しないことを示した。トレフラーは、これらを「ミステリー」と呼んだが、コンウェイは、「ミステリー」というのは、理論が棄却されたという暗号名であると指摘している。トレフラーは、HOV理論の考えられる修正・拡張についても検証しているが、どれも芳しい結果は得られなかった。
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