プロトン濃度勾配の生成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 07:41 UTC 版)
「電子伝達系」の記事における「プロトン濃度勾配の生成」の解説
複合体I、III、IVを電子1個が通過すると、約5個のプロトンが膜外に放出される。したがって、クエン酸回路で得られたNADHやFADH2の総数を合わせると、グルコース1分子辺り計100個以上のプロトンが膜外に放出される。これによって膜の内側のpHはおよそ8.0、膜の外側はpH7.0と10倍のプロトン濃度勾配が形成される。 ATP合成酵素(ミトコンドリアor細胞膜、F0F1)はプロトン濃度勾配を利用し、酸化的リン酸化によってアデノシン三リン酸 (ATP) の合成を行う。ATP合成酵素のF0部分は、プロトンをマトリックス側に戻すイオンチャネルとして働く。この逆流により酸化型の電子キャリアを生み出す際に、自由エネルギーが放出される。自由エネルギーは、複合体のF1部分に触媒されるATP合成を駆動する。プロトン濃度勾配が電子伝達系と酸化的リン酸化を共役させるというプロセスは化学浸透共役説によって説明されるもので、これはノーベル化学賞受賞者のピーター・ミッチェルが提唱したものである。ATP合成酵素を呼吸鎖複合体Vとする教科書も存在している。実際、高等学校の生物学では酸化的リン酸化も電子伝達系に含んでいる場合も多い。しかしながら、多くの専門書では呼吸鎖複合体はIVまでしか存在せず、『ATP合成酵素』として表記されている。 また、プロトン濃度勾配を用いて、ATPの膜外への放出や共輸送によって膜内に物質を取り込むこともできる。
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