ファイナンス分野への貢献
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/07 15:16 UTC 版)
あるグラフ上の直線、もしくは曲線を、方程式で記述することができれば、その式を解くことで、未来のある時点における値を、計算で求めることが可能になる。 従来、方程式で表現することができるグラフは直線もしくは規則性を持つ曲線のみであった。ブラウン運動の軌跡や、株式や債券の金融商品の価格変動のチャートなど、全く規則性のないランダムな曲線は、方程式で表せず、したがって未来のある時点における、計算値を求めることもできなかった。 伊藤の定理は微積分に確率論を導入することで、ランダム曲線を方程式で記述することを可能にした。このため、将来における金融商品の計算価格を算出する計算式の定立に道が開かれ、 数学に留まらず1990年代に発達した金融工学理論の進歩に多大な貢献があった。 デリバティブの一種であるオプションの価格評価式であるブラック-ショールズ方程式の導出もまた、伊藤の定理が基礎となっており、同方程式の考案者としてノーベル経済学賞を受賞したマイロン・ショールズは伊藤に会った際にわざわざ握手を求め、伊藤の定理に敬意を表した。伊藤自身は経済学に無関心で、ある経済学者の集まりに出席した際にあまりの歓迎ぶりに当惑し、そもそもそんな定理を導いた記憶はないと言い張ったという。
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